【書評】Wanhoの読書備忘録

ワンホの本要約ブログ

「本の要約」をわかりやすく書いていきます。

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『SIMPLE RULES -「仕事が速い人」はここまでシンプルに考える-』

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シンプルなほうがうまくいく

多くの調査では、ダイエットや投資、社会的成功にも、実は「シンプルなルール作り」が成功のカギを握っていることがわかっています。

情報過多の現代には相関関係のないデータなどのノイズが多く(ヒールの高さと景気には相関があるなど)、その上、過去に起きたことが必ずしも未来に繰り返されるとは限りません。より良い決断をしたいなら、細かい要素には拘らず、最も重要なものことに焦点を絞る必要があります。だからこそ最短時間で成果を最大にするシンプルなルールが大切なのです。

ちなみに、肥満率が高いアメリカ人と生活習慣が似ているフランス人に肥満が少ないのは、「夕食は直径25センチのお皿に収める」や「満腹を感じたら食事をやめる」などのシンプルなルールがあるからだそうです。(フレンチ・パラドックスという。)

本書では、どうして物事はシンプルなほうがうまくいくのか、「シンプルなルール作り」とはどういうものかを、多岐にわたる業界の成功事例を挙げながら説明しています。

シンプルなルールの特徴

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  1. ルールの数が少ない
    シンプルゆえに最優先事項に集中できる。また、心理的負荷をかけずに、より優れた意思決定が可能(分かりやすく覚えやすいことも重要!笑)。
  2. 使う人に合わせてカスタマイズ可能
    企業やグループでも連携がうまくいく。
  3. 具体的である
    複数の事象に対して、ある特定のルールをまんべんなく当てはめようとすると、結局はうまくいかなくなる。適用範囲が広すぎる包括的なルールは「非現実的なもの」として軽く扱われてしまうので注意が必要。
  4. 柔軟性がある
    具体的である一方で、目的を1つに絞るものの、ルールの範囲内なら状況に応じて自由にアレンジできる柔軟性が必要。つまり、具体化し過ぎもよくない。成功している企業は、縛りのバランスをとっている。

ちなみに、パイロットや医者など、予測可能かつ効率的で、できるだけミスを出さないことが求められる会社では、詳細なマニュアルが必要です。「細部にわたって取り決められたルール」が役に立つ場合もあるのです。例えば、アルバイトの多いフランチャイズで、どの店舗でも同じ味とサービスを提供するには、おのずと「詳細なルール」が必要になってきます。

どんなルール?

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本書で紹介されているシンプルなルールは大きく2つのタイプ。「意思決定をするためのルール」と「物事をうまく進めるためのルール」です。以下、いくつか抜粋しました。

意思決定をするためのルール

  • 境界線ルール
    二者択一の形をとる、最も基本的なルール。境界線を設けた上で「イエス/ノー」の判断をする。例えば、泥棒が留守宅を見分けるポイントは「外に車が停まっているか?」に対し、「イエス」の場合である。
  • 優先順位ルール
    リソース(時間、労力、資金)が限られており、少ない資源を最大化する必要がある場合に有効。シリコンバレーのある大企業は、社員採用の際に「現役の従業員から紹介された人物」を優先的に雇っている。医療現場で用いられる「トリアージ」も優先順位ルールの一つ。
  • 停止ルール
    止め時を見極め、タイミングを決めるときに有効。投資家はしばしば「損失が〇〇%になったら損切りする」などのルールを用いる。

ここで面白いと感じたのはパートナー選びについての戦略の話です。独身グループに最後まで残っている人は、自分の求める一定の条件を設定し、それを満たす相手が現れるまでハードルを下げない「固定閾値戦略」をとります。一方で、ヒキガエルグッピーは年齢を重ねるにつれハードルを下げていく「可変閾値戦略」をとり、ベストではなくとも、そこそこ満足できるものが見つかった時点で決断するそうです。選択肢が多い場合にはやめるタイミングが難しいですが、そんな時に有効なのがこの「停止ルール」なんですね!

「物事をうまく進めるためのルール」では次の3つが紹介されています。気になる方は本書をぜひチェックしてみてください!

  • 時間の制約があるとき「何をどうするか」決めるハウツールール
  • 集団行動をとるときのコーディネーションルール
  • 「いつ行動するか」を決めるタイミングルール

ルール作りの4つの基本

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  1. 自分の経験を活用する
    自身の価値観を含んだ個性のあるルールは達成度を高める。
    究極にシンプルなデザインを追求し続けたスティーブ・ジョブズの「シンプル・イズ・ベスト」のルールには、彼の美に対する価値観が大いに反映されていますよね!
  2. 他者の経験を拝借する
    経験がない場合は、他者を手本にする。
    実は、ロボット掃除機ルンバの動きは、アリがエサ運びする姿を参考にしているそうです。
  3. 科学的証拠で補強する
    他社の経験を参考にする場合には、間違った方向に進んでしまうリスクがある。その際は、科学的根拠のある論文や書籍を活用する。
  4. 「話し合い」でレベルを上げる
    チームやグループの場合は、議論することでルールを発展させていくことができる。

大切なのは、ルールは試行錯誤の上、長い時間をかけて発展させていくものであり、一朝一夕では生まれないと理解することです。記録をとり、数日から1週間かけ、3つのカテゴリー(改善に向けて上手くいったこと、いかなかったこと、どちらでもないもの)に分けて評価します。永遠に続くルールはなく、定期的に見直すことでその後もアップデートしていく必要があるのです。

最後に、本書では「時にはプライドを捨てること」や「常識に囚われないこと」に触れています。例えば、Netflixは次のような常識外れの方法をとっています。

  • 金はたっぷり出し、話数や尺の長さ、キャスト選びなど制作に口出しはしない
  • 全話を完成させてから配信する

これらの常識外れな方法(ルール)も試行錯誤の上、長い時間をかけて発展してきたものと思います。

こんな人におすすめ

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本書では、上記の他にも、企業による戦略づくりや人生設計の方法を取り上げています。最も重要な物事に焦点を絞るシンプルなルールは、組織であれ、個人であれ様々なことに応用できます

最短時間で成果を最大にする方法を学びたい人には必読の一冊です!