【書評】Wanhoの読書備忘録

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『デジタル・ミニマリスト -本当に大切なことに集中する- 』

ジョージタウン大学準教授の著者カル・ニューポートが2019年に執筆した本書。MITで博士号を取得後に開設したブログ「Study Hacks」では、学業や仕事の生産性を上げ充実した生活を送るためのアドバイスしており、このブログは年間300万アクセスを超えます。

著者自身もデジタル・ミニマリズムを実践しており、本書では『スマホSNSを手放して時間や集中力、幸福感を一気に手に入れる最強メソッド』を学ぶことができます。

それでは、内容を見ていきましょう。

個人的評価

読みやすさ ★★★★★
新規性 ★★★★
有用性 ★★★★
おすすめ度 ★★★★

デジタルツール依存

インターネットが普及した現代では、多くのアプリやウェブサイトが朝から晩までユーザーの注意を奪い合い、人の気分に影響を及ぼしている。問題は、自分ではどうにもできない状況になりつつあると言う点。多くの時間をネットに費やしたいと思っている人はいない一方で、残念ながらデジタルツールは行為依存を促すように設計されている。

依存による弊害1

四六時中スクリーンを凝視せずにはいられないせいで、人々はどこに、何に注意を向けるべきかの判断を自分ではない何かにコントロールされている。誰もが何らかのメリットを期待してアプリを利用するが、いざ使い始めてみたところで、登録前にはそのサービスの最大の魅力と思えたものが、皮肉なことに頭のサービスによって損なわれていることに気づく。

例えば、遠く離れて住む友達と連絡を取り合うためにFacebookを始めたのに、いつしか目の前にいる別の友達との会話を続けることができなくなっている。

依存による弊害2

無制限にネットに接続していると心の健康を蝕まれる。友人の煌びやかな投稿内容を監視していると、劣等感に苛まれる。デジタルツールの過度な使用がもたらす疲労感は主体性を弱め、幸福度を低下させ、負の感情を増幅し、より大事な活動から注意をそらさせる力を持っている。

原因

スマホ依存の最大の原因は、新しいツールの大多数は表面上は無害と見えても、実はそうでないと言う点にある。誘惑に屈してしまうのはその人がだらしないからではなく、使わずにいられないようにするために開発には何百億ドルもの資金が投じられている。

実際にGoogleの元社員は「テクノロジーは中立ではなく、ユーザーに一定の方法で長時間使わせることを目的としている」と告発している。

依存へ導く要素は2つ。

  • 間歇(かんけつ)強化
    決まったパターンで報酬を得られるよりも、予期せぬパターンで与えられた方が喜びが大きくなる。SNSの「いいね」や「リツイート」は、不規則なフィードバックの効果を利用するようになっている。
  • 承認欲求
    人は他人からどう思われているかを全く意識せずにいることができない。「いいね」をたくさんもらうと承認をもらったような気分になる。

解決法

これらの対策として「デジタル安息日を設ける」「夜はスマートフォンをベッドに持ち込まない」「通知を切る」といった方法がよく挙げられるが、これらの対策では力不足である。

そこで必要なのは、『自分の根本をなす価値観に基づいた、妥協のないテクノロジー利用に関する哲学』。どのツールを利用すべきか、どのように使うべきかと言う問題に明確な答えを提示できる哲学である。

デジタル・ミニマリズム

自分が重きを置いている事柄にプラスになるか否かを基準に厳選した一握りのツールの最適化を図り、オンラインで費やす時間をそれだけに集中して、他のものは惜しまず手放しするようなテクノロジー利用の哲学。

この哲学を採用するデジタル・ミニマリストは費用対効果を常に意識しており、新しいテクノロジーが登場した時、慎重に取捨選択をしている。それを利用してもわずかな娯楽や利便性しか得られない場合は、初めから手を出さないし、そうでない場合でも「目標を達成するためにそのテクノロジーを利用することが最善か?」と自問し、最適な利用法や別の選択肢も検討する。

一方で、デジタル・マキシマリス(デジタル・ミニマリストの対義語)は新しいテクノロジーが目に止まった時、それにほんのわずかでもメリットがありそうならとりあえず使ってみようと言う姿勢を持つ。

ミニマリストは小さなチャンスを見逃しても気にしない。それよりも、人生を充実させると確実にわかっている大きな事柄をないがしろにすることの方を恐れる。

以下、デジタル・ミニマリストの考え方。

デジタル・ミニマリズムの三原則

①あればあるほどコストがかかる
②最適化が成功のカギ
③自覚的であることが充実感につながる

一つずつ見ていきましょう。

あればあるほどコストがかかる

人は特定のツールや行為を考えるとき、それが個別に生むメリットに注目しがちである。例えば、Twitterを積極的に活用すれば人脈が広がったり、斬新な発想に触れたりする機会があるかもしれない。しかし、その利益とかかったコストを比較するとどうだろう。

たまの出会いや新しい発想を目当てにせっせとツイートすることは、自身の時間と注意をどれほど注ぎ込むことに値するだろうか?

最適化が成功のカギ

あるプロセスに投入するリソースを増やしても生産量は無限に増えるわけではなく、いつか限界に達して、投資の増加分に対する利益は減っていく(収穫逓減)。要するにSNSのメリットを享受するには多くの時間・コストは必要ない。

例えばネットニュースは平日に記事をクリップしておき、休日に1週間分の記事に目を通す。ミニマリストはどのテクノロジーを利用するかだけではなく、どのように利用するかを考える。

自覚的であることが充実感につながる

利用するツール類を意識的に選択する行為そのものが幸福感につながる。そしてその幸福感は大概、排除したツール類から得られていたであろうメリットよりも大きい。自分の生活の中でテクノロジーにどこまでの役割を任せるか、自分自身でコントロールすることが充実感や幸福感につながる。

ここまでは『デジタル依存』と『デジタル・ミニマリストの考え方』を見てきました。以下、『デジタル・ミニマリストになるための具体的な方法』について見ていきたいと思います。

デジタル・ミニマリストの極意

ポイントは3つ。

ポイント

①デジタル片付けをする
②孤独の時間を持つ
③会話と接続のバランスをとる

詳細は下記。

デジタル片付けをする

要するに、デジタル・ツールの取捨選択です。
このライフスタイルの移行は30日間で行います。ステップは3つ。

必要ないテクノロジーの利用を30日間休止

現在利用中のどのテクノロジーを必須ではないカテゴリーに分類すべきかを判断する。一時的でも排除してしまうと仕事や日常生活に支障が生じるテクノロジーだけを残し、他のものは全て排除する。

どうしても必要なものは運用規定を定め、いつ、どのような場合なら利用を許可するか具体的に決めておく。

休止期間に、楽しくてやりがいのある活動や行動の発見を目指す

目的はテクノロジーから一時的に離れることに加え、リセット期間中に必須ではないテクノロジーを利用しなくなって空いた時間を埋める、『もっと価値の高い活動』を積極的に探す。

リセット期間の完了までに、真の充実感を生むような活動を再発見し、より良い生活(より意義深い目標の達成を後押しするためだけにテクノロジーを活用するような生活)を作り上げていく自信をその活動から得ていることが望ましい。

テクノロジーをゼロベースの生活に再投入する

30日間の休止期間後、まっさらな状態からスタートして、次の基準をパスしたテクノロジーだけを生活に受け入れ直す。

  • 大事な事柄を後押しする
  • 大事な事柄を支援する最善の方法である
  • 自分で定めた運用規定に沿った形で生活に貢献可能

「このテクノロジーは、自分が重きを置いている事柄を直接に支援してくれるだろうか」と自問する。何らかのメリットがありそうだとしてもそれでは足りない。

例えばInstagramでいとこの赤ちゃんの写真を見る代わりに、月一回電話で話す方が、絆を育むためには効果的。またFacebookを使うのは週末だけ、など運用規定を守る。

孤独の時間を持つ

孤独から生まれるメリットは「新たな発想」「自己理解」「他者との親密な関係」。

特に3つ目、他者と離れて落ち着いた時間を過ごすことにより、いざ他者と交流する機会が訪れた時、そのありがたみを実感できる。スマートフォンの使用により、私たちは他者の思考のインプットに気を取られ、自分の思考の向き合う時間が減少している。

2015年の調査では、10代の若者はメディアを平均で1日あたり9時間消費している。常に他社との接続を要求する文化にあって孤独の欠乏を避けるために、一人きりで考える時間と他者とつながる時間を日常の中で行き来することが大事。例えばリンカーン大統領は夏の夜をコテージで過ごし、翌朝はまた騒がしいホワイトハウスに戻って過ごした。

他者とのつながりは決して悪いことではないが、日常的にバランスよく孤独な時間を持つようにしなければ、つながりがもたらすメリットを享受できない。

このサイクルを実現するために以下のワークを行う。

会話と接続のバランスをとる

近年のデジタルコミニケーションツールの発展により、社交のネットワークは比較にならないくらい広がり、地理上の制約を受けなくなった。その一方で、文字ベースの短いメッセージや承認クリックによる交流が奨励され、やりとりされる情報量は大幅に減少した。

接続(オンライン上の交流)は会話(オフラインの交流)と同様に幸福度を増加させるが、リアルな世界での交流の方が価値が高い。また、ソーシャルメディアを使ったオンラインでのコミニケーション時間が増えると、その分だけオフラインでのコミュニケーション時間は減る。つまり、両者はトレードオフの関係にあり、リアルの世界での人間関係をソーシャルメディアの利用で置き換えると幸福度は低下する

デジタル・ミニマリズムを成功させるには、自分なりの会話と接続のバランスを見つけるところから始めなくてはならない。意識改革のための解決法として『会話中心コミュニケーション主義』となることがおすすめ。 

会話中心コミニケーション主義

接続(オンライン上の会話:メールやツイートなど)は単なる連絡手段と考える。目的は会話のためのお膳立てと、必要な情報(例えば、待ち合わせの時刻や場所)の効率的な受け渡し。この哲学を採用した場合、活発に連絡を取り合う人数は間違いなく減る。

しかし、会話にこそ価値があると考えるため、関係が縮小した感覚は錯覚に過ぎない。私たちが人として渇望するもの『共同体に属している感覚』を与えてくれるものは会話であり、接続は一見魅力的に思えるが私たちに必要なものをほとんど与えてくれない

会話を取り戻すのに役立つワーク

いいねやコメントをしない

会話と接続は同等であるといった学習してしまうと、低価値なやりとりが自分の意思とは関係なく膨張していき、やがて本当に大切な高価値なやりとりは生活から追い出されてしまう。人間関係に波が立つと考える人は、その不安を原動力にして「本物の会話」をすることに時間を使うべき。事前に周囲に知らせておくことも大事。

テキストメッセージをまとめて処理する

テキストメッセージでは連絡がつきにくいようにすると、大切にしている人たちとの距離がやや遠くなるために、その人たちとの関係はかえって強靭なものになる。

営業時間を設ける

特定の曜日の特定の時間を決め、その時間帯は必ずスケジュールを空けて会話ができるようにする。この営業時間を自分にとって大切な人たちに知らせる。これにより、いきなり電話をかけたら迷惑なのではないかと言う不安(音声通話恐怖症)を排除できる。

感想

いかがでしたか?

総じて言えるのは、デジタルツールは人間が依存するように作られており、目的なく使用していると大切なもの(時間や注意力、そして人間関係)を失ってしまう、ということ。

もちろん、基本的にツールは暮らしを良くするためのものですし、生活から完全に排除するのは困難です。だからこそ、不要なものは削ぎ落とし必要なツールを有効に使うことで、よりよい生活が可能ということです。

本書では、デジタル・ミニマリストになるためのワークも多く掲載されており、いくつか実践してみようと思えるものでした。

比較的新しい本ですし、特にスマホ世代の若い人にはグサッと刺さる内容と思います。「Twitterに張り付いている」「ネットサーフィンしていたら時間が飛ぶように過ぎてしまった」「YoutubeNetflixがやめられない」という人にはうってつけ。デジタル・ミニマリストになれれば、多くのリソースを取り戻すことができます。

ぜひ、ご一読ください。