『偉大な発明に学ぶアイデアのつくり方』
早稲田大学EDGEプログラム講師である三原康司氏が2016年に執筆した本書は、「どうすれば閃きが生まれやすくなるか」をテーマとした「思考展開法」を解説した一冊です。
著者は、アイデアを生み出すのが得意な人は「考える方法(閃きの手順)」を知っている、と言います。その手順が優れているかどうかによってアイデアの量と質に大きな差がつくのです。
本書では、新しいアイデアを閃かせる「思考展開法」を詳しく解説しており、この方法はビジネスから個人の問題解決まで広く活用することができます。
それでは、内容を見ていきましょう。
Wanhoの個人的評価
読みやすさ | ★★★★★ |
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新規性 | ★★★★★ |
有用性 | ★★★★★ |
おすすめ度 | ★★★★★ |
本書のハイライト
「シーズ」と「ニーズ」のマッチング
身の回りにある商品の多くは、シーズとニーズをうまくマッチさせることによって生まれた発明である。
- 「シーズ(種)」:技術やノウハウのこと
- 「ニーズ(必要性)」:人々が欲しいと感じているものやこと
例えば、レインコートは「石炭からガスを製造する過程で生じる廃棄物から得られる防水性の溶剤」というシーズ+「雨の日にも洋服を濡らさないで出かけたい」というニーズのマッチングから生まれた。
アイデア作成の手順
アイデアは「知識」「経験」「考える力(思考展開法)」の掛け算によって生まれる。アイデア作成の手順は以下の通り。
- 出発点を決める
- 隠れたニーズの発見・創出
- ニーズを実現できるシーズを見つける
- シーズを使って実現する手段を考える
- 手段を実行し次のアイデアの素を見つける
3つの質問
「思考展開法」の最大の特徴は、自問自答形式で考えること。
グループで議論したり、専門家や経験者の意見を聞くことも効果的だが、何より重要なことは「個の力」。思考展開法のメリットは、自分一人で個の力を高められること。
アイデアを実現するためにはニーズ、シーズ、手段が必要。これらを発見するために「3つの質問」を行う。
- それは何のため?(目的)
- それができると何ができる?(可能性)
- そのためには何をする?(手段)
①は上位目的を追求し、真の目的から新しいニーズを発見しようとする思考法。②はすでにある技術、つまりシーズからアイデアを広げる思考展開。③はこれまでの2つの展開で出てきたニーズやシーズを実現する手段を見つけることに使う。
①により上位目的を追求することで、現在の延長線上にない技術やノウハウを考えることができる。革新的な案となる可能性は、展開が上位の目的まで行けば行くほど高くなる。
②はできてしまった技術の活用方法を探る時に役立つ。自分たちができる価値を提供し、市場を創出・拡大する可能性があるものやことを考えることができる。例えばポストイットは、偶然できた「簡単に剥がれてしまうが、繰り返し貼り付けられる糊」の技術(シーズ)から生まれた。
③は今は実現できないニーズやシーズを出発点にして、技術ロードマップや開発計画などを作成することにも役立つ。
「3つの質問」を用いると、アイデア作成の手順は以下の通りとなる。
- 出発点を決める
- 隠れたニーズの発見・創出(それは何のため?)
- ニーズを実現するための隠れたシーズを見つける
(それができると何ができる?) - ニーズとシーズをマッチングし、有望と思われるニーズの案を考える
- シーズを使って実現する手段を考える(そのためには何をする?)
感想
本書からはアイデアを閃くメカニズムやその方法を学ぶことができました。
特に「3つの質問」を自分自身に投げかけることは、アイデア実現のために必要なニーズ、シーズ、手段を発見する助けとなります。
本書で解説されている思考法は、組織であれ個人であれ、アイデアを考え抜くのに非常に実用的な方法と思います。「他人とは異なる革新的なアイデアの発見を目指す人」や「アイデア創出のメカニズムを学びたい」という人は特におすすめです。
ぜひ、ご一読ください。
目次
Session 1 マッチング
Session 2 思考の双方向化
Session 3 ニーズ思考
Session 4 シーズ思考
Session 5 3つのQ
Session 6 何のため?[隠れたニーズを発掘する]
Session 7 何ができる?[隠れたシーズを見つける]
Session 8 そのためには?[手段を見つける]
Session 9 具体的な企画案へ
Session 10 推論の基礎
著者
三原康司(みはら・こうじ)
早稲田大学EDGEプログラム講師。静岡理工科大学総合情報学部准教授。名古屋商科大学大学院マネジメント研究科客員教授。1958年生まれ。早稲田大学理工学研究科博士前期課程修了後、ソニーに入社。2004年、ヘッドハントによりソーテックのマーケティング本部長に就任。その後、ベンチャー企業を創業し、多くの企業の新規事業開発などのコンサルティングを展開。