【書評】Wanhoの読書備忘録

ワンホの本要約ブログ

「本の要約」をわかりやすく書いていきます。

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『相手は変えられないならば自分が変わればいい』

医師・心理療法士であるラス・ハリスが2019年に執筆した本書は「心理療法ACT」を用いて恋愛・人間関係を改善するための方法を紹介しています。

本書の目的は、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)療法を用いて心理的柔軟性を発達させること。多くの研究で、心理的柔軟性が増すほど人生がより充実したものになることがわかっています。

本書からACTを学ぶことで、自分の心の動きを理解し、関係改善のための対処方法を身に付けることができます。

それでは、内容を見ていきましょう。

Wanhoの個人的評価

読みやすさ ★★★★
新規性 ★★★★
有用性 ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

本書のハイライト

心理的柔軟性とは?

心理的柔軟性は2つの部分からなる。

  1. マインドフルネス(という心の状態)
    → 心理的に現在に存在する能力。
  2. 効果的な行動を起こす能力
    → 衝動的、無分別ではなく、知覚的かつ慎重に行動する能力。

この心理的柔軟性が増すほど、自分を制限する思い込みを排除し、現在の行動に集中・没頭し、効果のない、あるいは自己破壊的な行動を変える能力が高まり、より良い恋愛・対人関係を築くことができる。

また、私たちは子供のうちから「恋愛に関する先入観」を刷り込まれており、まずこれらを自覚する必要がある。

【恋愛に関する先入観】

  1. 完璧なパートナーが存在する
  2. あなたが私を完璧にしてくれる
  3. 愛は簡単であるべきだ
  4. 永遠の愛

感情はコントロールできない

重要なのは、愛を感情ではなく行動として捉えること。

感情は気まぐれでコントロールするのは不可能だが、愛の行動は何を感じていようとコントロール可能である。愛を感じない時に愛の行動をするのは非常に効果的である。

重要なのは、感情をコントロールしようとするのはやめ、行動をコントロールすること。ここで指す行動とは、ハグしたり会話する等。

良い人間関係を築くために

他者の行動に影響を与えるあらゆるスキルをマスターしたとしても、他人をコントロールすることは不可能であり、パートナーが自分の望む反応を示してくれる保証は無い。コントロールできるのは自分の反応だけであり、習慣を変えたり行動したりすることはパートナーの協力があってのこと。

一方、自分がコントロールできる範囲(自分の行動)に集中していると、頼んでもいないのにパートナーがポジティブな変化を遂げることがよくある。

要求とコントロールの試みがなくなってくると、多くの場合、パートナーは安堵感を得て、自分の望みを受け入れるようになり、自発的に優しく扱う傾向がある。そして、コントロール戦略にエネルギーを費やすのを止めると、節約したエネルギーを自分が理想のパートナーになるために投資することができる

パートナーを受容する

「受容」とは、相手が差し出すものを喜んで受け入れること。相手が自分とシェアしようとするものを、それが何であれ受け取ること。

人生で確実にコントロールできるのは自分の行動だけ。私たちはパートナーが望み通り行動してくれることを期待しているが、強く健全な関係を作りたいなら無条件にこれを受け入れる必要がある。

それは自分の求めるもの、欲するものを諦めるということではない。人は感謝され、気遣われ、尊敬され、良い扱いを受けることを望んでいる。

こうした望みや必要性を認め、重んじるのは当然だが、それらを「絶対にゆずれない条件」にするのはやめること。もしそうなると、人はそれを渇望し、しつこく求め、依存的になる、批判的になり、要求が多くなってしまう。

ルールと価値を区別する

「~した方が良い、~は必須、~しなければならない、~するべきだ」などのルールは縛られすぎると問題が起こる。柔軟性をなくして硬直し、互いに制限ばかりの空虚な人生になってしまう。

重要なのは、ルールと価値を区別すること

【理由】

  1. ルール通りに人生を生きていると息が詰まり、常にストレスを感じる。
  2. どんな価値観でもそれに即した行動は無限にあるが、ルールの下では自分ができる行動は制限される。
  3. カップルが対立する価値を持つのは稀。一方で、双方が同じ価値を持つケースの方がはるかに多い。

よくあるのが、価値は同じでも行動のルールが異なる場合。根本的に同じような価値を持っていることが理解できれば、価値は互いに受け入れあい、尊敬し合うことができる。

「俺(私)の意見が正しい!」

互いの意見が食い違い、口論になった場合、ここでは真実かそうでないのかの議論はしない。注目すべきは「自分たちの関係にとって何が最も役に立つか」である

互いの意見が真実かどうかはさておき、変わるべきは相手で自分ではないと言う考えにしがみついている時、それは自分の態度や行動に良い影響を与えない。

長い目で見て、「それは2人の関係にとって良いことだろうか?」と考える必要がある。

「今」に集中すること

他者への最高の賞賛表現の1つは、相手に全面的に注意を向けること。誰かを自分の意識の中心に置くと、相手が注目され、丁重に扱われたと感じる。

2人の関係が始まった頃、互いに気遣い、互いに相手に興味を持っていたが、時間が経つにつれて相手への興味を失い、欠点が目についてくる。

相手の表情やボディーランゲージ、会話、感情に集中し、マインドフルになること。

相手の立場に立つ

相手との間に困難な状況を解決する1つの方法は、パートナーの視点から状況を見ること。相手に同意するのではなく、相手の言い分を理解しようと努める。

相手の立場に立つことができれば、批判をすることもなくなり、正しいのは自分と言う思考から離れられる。

相手は自分の価値が認められ、尊敬されていると感じ、その場のやりとりを、より実りのあるものにしてくれる。

【建設的な会話のステップ】

  1. パートナーの立場に立つこと
  2. 自分が相手の考えを正しく理解しているか確認する
  3. 自分がパートナーの考えを理解したと相手が感じるまで会話を続ける

感想

本書は主に恋愛関係としてのパートナーとの関係づくりに主軸を置いたものとなっています。

読み進める中で、タイトルの通り「相手は変えられない」「変えられるのは自分の行動だけ」ということを学び、良い関係を築くためには「自分が変わらなきゃ!」と思えるような内容となっています。

パートナーと議論になると、つい自分の意見の正当性を主張してしまいがちですが、本書に出てくる「それは2人の関係にとって良いことだろうか?」との問いが、関係作りの本質をとらえており、すべての答えであるような気がしました。

ACTは恋愛関係だけでなく、家族や友人、同僚との関係改善など多様な場所で応用できる考え方・スキルと思います。人間関係に悩んでいる全ての人におすすめの1冊です。

ぜひ読んでみてください。

目次

はじめに 恋愛とは骨の折れるもの
第1部 素晴らしい愛が台無しに
第2部 誓いを立てる
第3部 良い関係を作ろう

著者

ラス ハリス
医師で心理療法士であり、ストレスマネージメントの権威でもある。自らもアクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)によって不安との戦いを乗り越えた経験を持つ。国の内外を旅して、マインドフルネスの利用方法を指導するワークショップを行っている。