『知識を自分のものにする最強の読書』
本書では、これまで1万冊以上の本を読んできた著者が、本の知識を活かし自分の力にする読書法を詳細に紹介しています。真新しいテクニックは多くない印象ですが、偉大な読書家(著者以外にも複数)がどのようにして本を読み、自分の力に変えてきたかが述べられており、「今すぐ本が読みたい!」と思えるような内容となっています。実践的なテクニックが多く、とても参考になるものと思います。
個人的評価
読みやすさ | ★★★★★ |
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新規性 | ★★★★★ |
有用性 | ★★★★★ |
おすすめ度 | ★★★★★ |
それでは、内容を見ていきましょう。
本によって独学した人、よく学んだ人が成功する
日本の戦国武将の中でも勝ち抜く武将は、よく本を読んで学んだ人。
日本統一を遂げた徳川家康も代の読書好きであったとのこと。
日本は昔から基本的に平等であったが、唯一、その人が本を有効活用しているかどうかによって大きな差が出た社会だったと言える。努力した者のみが報われ、平等に与えられるチャンスを利用するかどうかで、成功するかどうかが決まる実力勝負の社会である。
本当に力がつく読書法のポイントは3つ。多読、速読、精読である。
以下、順番に見ていきましょう。
多読
多読とは、並行して複数の本を読むこと。当たり前だが、多くの知識を身に付けるには本をたくさん読む必要がある。メリットは、時間をそれぞれ有効に使えること、違う種類の本に変えることで脳を休ませることができること。
デメリットは、多読するためのたくさんの本を保管する場所が必要なこと。一方で、保管場所が本の内容とリンクすることで記憶の定着にもつながる。
著者は、月に数十冊近くは本を買い、数千~数万冊所持しているとのこと。そして年に2、3回は、本の整理をして置く場所を変え、同じテーマの本をできるだけ1カ所に集めるようにしている。何がどこにあって、何のときに読むべきかが頭の中にインプットされる。また、1回読んで、もう読まないと思った本は別の場所(実家や倉庫)に保管する。本を1000冊以上読んだ人は全く本を読まない人と比べて、仕事の成果がかなり異なると述べている。
速読
速読とは、読んで字のごとく「本を早く読むこと」。速読術を身に付けないと、たくさんの本が世の中に溢れている中で、自分にとって有用な本を見つけ、そこから学ぶことが困難になる。ここでの速読は1冊を30分で読むことを基本とする。
速読はそれ自体が目的ではなく、自分の楽しみと、何よりも自己実現のための手段として取り組むべきもの。そのために自分に合うやり方を自分に見つければ良い。
ポイントは読む目的を明確にすることと、読書を始める前に、表紙や目次をざっと見て全体像を掴むこと。
著者は他にもフォトリーディングなどの速読術を本書で紹介しています。特に興味深かったのは、佐藤 優氏の速読法。文字をできるだけ早く追う『普通の速読』の他に、文字を追わずにページを見る『超速読』を活用しています。
1冊30分程度で読む『普通の速読』に対し、1冊を5分で読む方法が『超速読』です。まず、『超速読』で本を4つのカテゴリーに分けます。
- 熟読する必要があるもの
- 普通の速度に速読に対象にして、読書ノートを作成するもの
- 普通の速読の対象にするが、読書ノートを作成するには及ばないもの
- 超速読にとどめるもの
1冊5分と決めて、後はひたすらページをめくるのです。その際付箋を貼り、ライン引きや囲みを行うことで気になったところがわかるようにします。1~3に分類された本については、そのカテゴリーに応じて再度読むそうです。
精読
精読の方法
『抜き書き』のポイント
- 抜き書き用のノートを用意する
- あくまで自分のペースで行い、これを義務として決して行わないこと
- 読書との抜き書きの時間配分は10対1くらいが良い
- 読書と別に、抜き書きの時間を設ける
本を読んでいるときに抜き書きすべきだと判断したら、その部分を線で囲んだり線を引いたりした上で付箋を貼っておき、後で抜き書きする。 - 定期的にノートを見なおすこと
- 自分なりのコメントを書いておくこと
こんな人におすすめ
本書からは、偉大な作家・読書家の方々からどのようにして本を読むか、そして本で得た知識をどのように活かすのか、を具体的なテクニックとして学ぶことができます。最終的な目標は「自分なりの読書法を確立する」に限りますが、初心者~中級者には参考になる考え方や技術が盛り込まれています。200ページ以下と読みやすいのも特徴です。
読書を始めたばかりの人、読んでも内容をなかなか覚えられず仕事や生活に活かしきれない、読書のモチベーションを上げたい、と思う人にはうってつけの一冊です。
『SIMPLE RULES -「仕事が速い人」はここまでシンプルに考える-』
シンプルなほうがうまくいく
多くの調査では、ダイエットや投資、社会的成功にも、実は「シンプルなルール作り」が成功のカギを握っていることがわかっています。
情報過多の現代には相関関係のないデータなどのノイズが多く(ヒールの高さと景気には相関があるなど)、その上、過去に起きたことが必ずしも未来に繰り返されるとは限りません。より良い決断をしたいなら、細かい要素には拘らず、最も重要なものことに焦点を絞る必要があります。だからこそ最短時間で成果を最大にするシンプルなルールが大切なのです。
ちなみに、肥満率が高いアメリカ人と生活習慣が似ているフランス人に肥満が少ないのは、「夕食は直径25センチのお皿に収める」や「満腹を感じたら食事をやめる」などのシンプルなルールがあるからだそうです。(フレンチ・パラドックスという。)
本書では、どうして物事はシンプルなほうがうまくいくのか、「シンプルなルール作り」とはどういうものかを、多岐にわたる業界の成功事例を挙げながら説明しています。
シンプルなルールの特徴
- ルールの数が少ない
シンプルゆえに最優先事項に集中できる。また、心理的負荷をかけずに、より優れた意思決定が可能(分かりやすく覚えやすいことも重要!笑)。 - 使う人に合わせてカスタマイズ可能
企業やグループでも連携がうまくいく。 - 具体的である
複数の事象に対して、ある特定のルールをまんべんなく当てはめようとすると、結局はうまくいかなくなる。適用範囲が広すぎる包括的なルールは「非現実的なもの」として軽く扱われてしまうので注意が必要。 - 柔軟性がある
具体的である一方で、目的を1つに絞るものの、ルールの範囲内なら状況に応じて自由にアレンジできる柔軟性が必要。つまり、具体化し過ぎもよくない。成功している企業は、縛りのバランスをとっている。
ちなみに、パイロットや医者など、予測可能かつ効率的で、できるだけミスを出さないことが求められる会社では、詳細なマニュアルが必要です。「細部にわたって取り決められたルール」が役に立つ場合もあるのです。例えば、アルバイトの多いフランチャイズで、どの店舗でも同じ味とサービスを提供するには、おのずと「詳細なルール」が必要になってきます。
どんなルール?
本書で紹介されているシンプルなルールは大きく2つのタイプ。「意思決定をするためのルール」と「物事をうまく進めるためのルール」です。以下、いくつか抜粋しました。
意思決定をするためのルール
- 境界線ルール
二者択一の形をとる、最も基本的なルール。境界線を設けた上で「イエス/ノー」の判断をする。例えば、泥棒が留守宅を見分けるポイントは「外に車が停まっているか?」に対し、「イエス」の場合である。 - 優先順位ルール
リソース(時間、労力、資金)が限られており、少ない資源を最大化する必要がある場合に有効。シリコンバレーのある大企業は、社員採用の際に「現役の従業員から紹介された人物」を優先的に雇っている。医療現場で用いられる「トリアージ」も優先順位ルールの一つ。 - 停止ルール
止め時を見極め、タイミングを決めるときに有効。投資家はしばしば「損失が〇〇%になったら損切りする」などのルールを用いる。
ここで面白いと感じたのはパートナー選びについての戦略の話です。独身グループに最後まで残っている人は、自分の求める一定の条件を設定し、それを満たす相手が現れるまでハードルを下げない「固定閾値戦略」をとります。一方で、ヒキガエルやグッピーは年齢を重ねるにつれハードルを下げていく「可変閾値戦略」をとり、ベストではなくとも、そこそこ満足できるものが見つかった時点で決断するそうです。選択肢が多い場合にはやめるタイミングが難しいですが、そんな時に有効なのがこの「停止ルール」なんですね!
「物事をうまく進めるためのルール」では次の3つが紹介されています。気になる方は本書をぜひチェックしてみてください!
- 時間の制約があるとき「何をどうするか」決めるハウツールール
- 集団行動をとるときのコーディネーションルール
- 「いつ行動するか」を決めるタイミングルール
ルール作りの4つの基本
- 自分の経験を活用する
自身の価値観を含んだ個性のあるルールは達成度を高める。
究極にシンプルなデザインを追求し続けたスティーブ・ジョブズの「シンプル・イズ・ベスト」のルールには、彼の美に対する価値観が大いに反映されていますよね! - 他者の経験を拝借する
経験がない場合は、他者を手本にする。
実は、ロボット掃除機ルンバの動きは、アリがエサ運びする姿を参考にしているそうです。 - 科学的証拠で補強する
他社の経験を参考にする場合には、間違った方向に進んでしまうリスクがある。その際は、科学的根拠のある論文や書籍を活用する。 - 「話し合い」でレベルを上げる
チームやグループの場合は、議論することでルールを発展させていくことができる。
大切なのは、ルールは試行錯誤の上、長い時間をかけて発展させていくものであり、一朝一夕では生まれないと理解することです。記録をとり、数日から1週間かけ、3つのカテゴリー(改善に向けて上手くいったこと、いかなかったこと、どちらでもないもの)に分けて評価します。永遠に続くルールはなく、定期的に見直すことでその後もアップデートしていく必要があるのです。
最後に、本書では「時にはプライドを捨てること」や「常識に囚われないこと」に触れています。例えば、Netflixは次のような常識外れの方法をとっています。
- 金はたっぷり出し、話数や尺の長さ、キャスト選びなど制作に口出しはしない
- 全話を完成させてから配信する
これらの常識外れな方法(ルール)も試行錯誤の上、長い時間をかけて発展してきたものと思います。
こんな人におすすめ
本書では、上記の他にも、企業による戦略づくりや人生設計の方法を取り上げています。最も重要な物事に焦点を絞るシンプルなルールは、組織であれ、個人であれ様々なことに応用できます。
最短時間で成果を最大にする方法を学びたい人には必読の一冊です!
SIMPLE RULES 「仕事が速い人」はここまでシンプルに考える 三笠書房 電子書籍
- 作者:ドナルド・サル,キャスリーン・アイゼンハート
- 発売日: 2017/08/25
- メディア: Kindle版
『エッセンシャル思考』
エッセンシャル思考とは
エッセンシャル思考とは、「人生に意味や目的を見出し、本当に重要なことを成し遂げる」ための考え方です。
- 多くを求めると、すべてが中途半端になってしまう。
つまり、自分で優先順位を決めなければ、他人の言いなりになってしまうということ。 - 情報過多な現代では選択肢が多い。
全てが手に入るが故に、「全部手に入れよう」と欲張りになってしまっている。 - 何かを選ぶこと=何かを捨てること。
選択できずにすべてやろうとすると、あれもこれも失うことになる。トレードオフの現実を受け入れ、何に全力を注ぐかを考える。
自分にとって本当に重要なことに目を向け、それを実現するためには「正しく捨てる技術」が必要であり、本書はそのマインドセットを具体例とともに述べています。また、最小の時間で成果を最大にするためのテクニックが紹介されており、読者は効果的なテクニックを身に付けることが可能です。
以下、重要と感じた項目の抜粋です。
見極める技術
多くの選択肢から、少数の重要なことを見分ける。
- 孤独の時間を作る。
- 情報の本質をつかみ取る。
- 自分を知る(日常の大きな流れを把握する)ために、日記をつける。
- 絶対やりたいこと以外はやらない。
選抜するためには厳しい基準が必要。例えば90点ルール。最重要基準を一つ用意し、その基準に従って選択肢を100点満点で評価する。90点未満は不合格、90点以上のことしかやらない。「上司に言われたからやる」、「みんながやっているからやる」等の瑣末な選択肢を容赦なく切り捨てることができる。
捨てる技術
本当に重要なことをやり遂げるために、不要な物事を捨てる必要がある。
- 「具体的かつ魅力的」な本質目標をたてる。
たった一つのことしかできないとしたら、何をするか?を考える。 - 重要でないことには「ノー」という。
トレードオフに目を向け、本当に重要なことをやるために、他の依頼は断る。「イエス」と言ったら、何を失うのか?と考える。 - 既に持っているものを手放すには?(もったいないを克服する)
「もしまだ持っていなかったらコストを払ってそれを手に入れたいか?」と自分に問う。スケジュールを立てる場合は、一度今の時間の使い方を忘れ(ゼロベース)、予定がゼロの状態から今日やるべきことを考える。一度やめてみて、不都合があるかどうかを確かめる(逆プロトタイプ)。
しくみ化の技術
努力や根性なしでエッセンシャル思考を実現するには、自動化のしくみ作りが必要。
- 予定にバッファを組み込む。
物事は決してうまく進まないし、人は作業にかかる時間を短く見積もる傾向がある。常に最悪の事態を想定し、見積もりは1.5倍の時間で考える。 - 無駄な仕事を減らすには?
仕事や日常で進行を妨げるボトルネックを特定し取り除く。邪魔するものをリストアップし、解決の優先順位をつける。最大の障害はスピード重視で取り除く。完璧主義にならないこと。 - モチベーションを保つには、前進している感覚をつかむことが重要。
コツは小さく始めること。地道でも着実に小さな成功を積み重ねる。進捗を見える化すると、ゴールまでの道のりは満足感に満ちたものになる。 - 習慣化
難しい判断をする必要がなくなり、誘惑から目を背けるためにエネルギーを使う必要もない。一時間早く起きるなど小さく始める。ポイントは一つずつ取り組むこと。 - 目に前のことに集中する。
対象を一つに決め、全力で没頭する。「今、何が重要か?」と自分に問いかける。
こんな人におすすめ
本書には人の「物の見方」を変え、実際に行動を起こさせる力があると思います。特に、いつも時間に追われている人、家族や友人と過ごす時間がおろそかになっている人、趣味にもっと時間を割きたいと思っている人におすすめです。
自分にとって本当に重要なことに的を絞り、一点集中でそれを成し遂げるための指南書と言っても過言ではないでしょう。ぜひチェックしてみてください。