【書評】Wanhoの読書備忘録

ワンホの本要約ブログ

「本の要約」をわかりやすく書いていきます。

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『理系読書』

駿台予備校講師の著者 犬塚壮志が2020年に執筆した本書。

著者は、時短を徹底した『超合理的な理系脳読書術』により、東大入試よりも難しいといわれている業界最難関の駿台予備学校の採用試験に一発合格(当時、最年少)したそうです。

本書では、最短最速で著者の経験知やノウハウを自分の頭にインストールし、自分の問題解決に役立てる至極の読書術について紹介しています。

キーワードは、文系が知らない「理系の読み方」です。もちろん理系・文系問わず身に付けることが可能です。

それでは、内容を見ていきましょう。

Wanhoの個人的評価

読みやすさ ★★★★
新規性 ★★★★
有用性 ★★★★
おすすめ度 ★★★★

 

理系読書の考え方

重要なのは『どれだけ読まないで済ませるか』であり、速読はできなくてもOK。

著者の経験上、「素早く眼球を動かす方法」や「キーワードだけを拾い上げる方法」は役にたたなかった。自分にとって必要な箇所だけを拾って読むことで、読書にかける時間を短縮することができる。

また、理系読書では『問題解決に必要な情報を得られた瞬間』を読了と定義する。要するに、本全体を読む必要はない。問題解決のための読書で重要なことは「全部読む」ではなく「どこを読むか」であることを意識する。

時間は15分程度なら集中して読書がしやすい。15分で1冊読みきれなかったとしても、15分1セットの読書を数回繰り返す方が、一度に長時間読み続けるよりも記憶しやすい。

超合理化サイクル

理系読書の大枠は次の通り。

  1. 準備する(読む)
    本の中から自分の問題解決に必要な情報を集めて、どんな実験を行うか計画を立てる。
  2. 実験する(やってみる)
    1で集めた素材を使い、立てた計画に基づいて現実世界で問題解決を試みる。
  3. 評価する(確かめる)
    試してみたことがうまくいったのか、いかなかったのか、検証する。うまくいかなかったとしたら、その結果を検証し改善策を立てる。

このサイクルを1周回すと、多かれ少なかれ新たな改善点が見つかる。そしたら今度は、その改善点を修正すべく、新たな読書のサイクルに入る。このステップをぐるぐる回していく超合理化サイクルにより、読書の効果を最大化させていく。

読書の効果を高める3つのポイント

ポイントは以下のとおり。

読書の効果を高めるポイント
  1. 問題意識の明確化
  2. 問題解決した後の理想像の設定
  3. 本から抽出した情報の活用

このうち1つでも欠けていたり、各要素に対する意識が低いと読書の効果が半減する。問題意識がなければ、そもそも何から始めればいいのか判断できない。問題解決した後の理想像を設定していなければ、自分にとって必要な情報が明確にならない。抽出する情報を絞り込まないと、余計な情報にとらわれてしまい、ゴールまで最短距離で上っていくことができない。

これらを意識していれば、読むべき本や読むべき箇所を正しく選択できる。

読書の効果は『理想像の設定』で9割決まる

読書をする前の段階から、読書後に「どんな状態がベストであるか」をイメージしておくことで、本の情報をより高い精度で抽出できるようになり、読んだ内容への理解が深まる。

例えばビジネスシーンにおいての問題解決は、周囲の人から評価されるかどうかが重要である。そのため「どんな評価を得たいか」「どんな状態が評価されているか」をまず明確にし、そのイメージから逆算して、本から抽出する情報の絞り込みを行ったり、実行する内容を決めたりすることが、最短ルートで成果を上げる合理的な読書術である。

情報は絞るが勝ち

超合理化サイクルを回すことを前提とすると、本のすべての内容を「やってみる」「確かめる」まで行うには、膨大な時間がかかってしまう。

大きな成果を得たいと言う意欲や姿勢はもちろん大切だが、自分にとって必要な情報だけを切り取って実行し検証した方が、着実にノウハウや知恵を身に付けることができる。

つまり、最初から最後まで読む必要はない。極端な話、1冊のうち1割程度読んで自分の問題解決に役立つ情報が抽出できれば、残りの9割は捨てても構わない。

特に最近のビジネス書や実用書はクオリティが非常に高く、9割捨てても十分元が取れる情報が抽出できる。最初から本の9割は捨てる覚悟でいること

準備する(読む)

超合理化サイクルの1つ目のステップは『読む』です。ただし、ただ読むのではなく、自分にとって必要な部分だけを抽出し、短時間で読む必要があります。

そのためには、読む前の準備が必要不可欠となります。まずは、この準備について見ていきましょう。

メタデータのチェック

本の内容を素早く正確に読み取るためには文脈を理解してから本を読む方が良い。ここで言う文脈とは、文章のつながりや流れだけでなく、文章を理解する上での前提条件となる背景情報も合わせて指す。

文脈を理解するコツは『メタデータ』をチェックすること。本のメタデータとは、次の7つを指す。

  • タイトル
  • サブタイトル
  • 発行年月日
  • 著者名
  • 著者プロフィール
  • 目次

これらの情報をチェックしておくことで、必要な情報を本文から抽出しやすくなり読む時間を圧縮できる。特にチェックすべき項目は「発行年月日」「著者プロフィール」「目次」の3点。

「発行年月日」は、時代背景を読み取るための重要なポイント。発行年月日を見れば、どの時点での最新情報が書かれている本なのかを知ることができる。

確認したら、その時代の背景を推測しながら読むようにする。これを理解しておかないと、今の時代にそぐわない価値観や考え方、スキルなどを本の中から抽出してしまう可能性がある。

「著者プロフィール」からは、著者の経歴を読み取る。所属組織や専門分野、得意としている分野を把握し、なぜ著者がそのテーマを語るのかを判断する。

「目次」は、全体像を把握し、どの章に何が書かれているかを理解するのに役立つ。また、読まない部分も全体のどこに位置して、互いにどんな関係にあるのかだけは把握しておく必要がある。

ポイントは、『各章にラベルをつける』こと。ラベルは大まかに分けて次の8種類がある。

  • 背景
  • 定義
  • メリット
  • カニズム
  • 方法論
  • ノウハウ
  • 事例
  • その他

1冊の本の中にこの8つすべての内容が含まれているとは限らないが、慣れないうちはこれらのラベルを各章の上に書き込むと良い。全体像と構造を理解したら、自分の問題意識と照らし合わせて、取捨選択していく。

スクリーニング

『スクリーニング』は、背景情報を確認し、あたりをつけた章の本文にざっと目を通すステップ。「著者の得意分野」と「自分の問題意識に対する解決策」が合致する箇所が出てきたらあたり。そんな内容を文章の中から拾い上げるように読んでいく。

スクリーニングのポイントは2つ。

  1. 予測しながら読むこと
  2. 自分の知らない内容に絞ること

まず『予測しながら読む』こと。「こんなことが書いてあるのかな」「自分の〇〇と言う問題意識に役立ちそう」と予測しておく。そうすることで、本の内容をよりスムーズに理解できるようになり、記憶にも残りやすくなる。

次に、『これまでの自分の中になかった情報を優先的に味わう』こと。既に自分の中にあるものを抽出しても、現実世界での変化は期待できないため。

また、書籍の中に「要約」や「まとめ」がある場合は、これらを優先して読むことで内容の理解度を高められる

要約は章や節の最後に載せてあることが多いが、あえてこの要約を読んでから本文を読み始める。要約がない場合、要約の役割を果たす語句を文章中に探す。具体的には「つまり」「要するに」という接続詞に注目する。

仮説を立てる

ここでは、本から抽出した情報を活用して「やってみる」ための仮説を立てる。イメージは簡単なアイデア出し。

本の情報を使ってアイデアを創出するには、自分の知識や経験と本の内容を組み合わせるほかない。本は誰もが手に入れられる一般情報だが、そこから生まれた仮説やアイデアは自分だけのもの。

「この本の情報を使って自分の仕事を改善してみたら、効率が上がるかも」くらいのアイデアでも十分に価値がある。浮かび上がってきたアイデアは本の余白に必ずメモすること。

実験する(やってみる)

ここからは、本から抽出した情報を実践し、経験することで、それをより深く理解し、自分に浸透させていく。単にやってみるだけでなく、今からの情報を自分に合うようにアレンジして、自分ならではの法則やルールを作り、様々な場面で使えるよう目指す。

情報のアレンジ

本から抽出した情報を自分の中に浸透させるには、情報をそのまま使うのではなく自分用にアレンジする必要がある。そのためには、アイデアや仮説を整理して保存する必要がある。クラウドサービスのメモアプリなどに保存し、データとして一元化しておく。データで保存しておけば、持ち運びが楽な上、修正も容易であり、検索して探し出すことができる。

とりあえずやってみる

誰にでも「理屈だけでわからなかったことが実際にやってみたら腑に落ちた」経験があるはず。理解できるかどうかは別として、最速でインストールするためには、実体験をすることが最大の近道。

自分の抱える問題に対して、いち早く納得のいく解を得るために、『とりあえずやってみる』ことが合理的な選択。失敗を恐れずに「やってみないことには何もわからない」「失敗すれば何かが明らかになる」と言う意識を強く持つ。

もし失敗しても「なぜ失敗したのか」「どこが悪かったのか」と分析をし、改善策を考える機会が得られる。初めは小さく試し、少しずつ軌道修正して成功確率を高めていく。小さな失敗をできるだけ早く経験することが、大きな成果を出す最短の道につながる。

即行動を徹底するために

読書すると同時に、目標と期日を設定しておく。ポイントは、本を読んでから即日から1週間以内に実験を開始すること。

読書から実験までの期間が空いてしまうと、本を読んだ直後の強い情熱が徐々に薄れていってしまう。場合によっては、実験に着手することなく別の本を読み始めてしまい、新たにやりたいことが出てくる。そうなれば前の本を読んだ時間は無意味になってしまう。

評価する(確かめる)

ここでは、『やってみる』をした結果どうなったのか、問題解決に至ったのかどうかを評価する。ここで行う評価とは、実験の結果を考察するだけでなく、これまでの作業を振り返って確認し、改善点を探ること

これにより成果の出ない読書を淘汰できる。また、このような評価を得るまでは類書を読んではいけない。問題解決ができていなければ、問題意識はそのままで文書から抽出する情報を代わり映えしない。

ポイントは、行動と成果をセットで評価すること。読書により、「自分の行動がどう変わったのか、それによりどんな成果が出たのか」「行動が原因となり、その結果として欲しい成果が得られたか」「当初の問題は解決できたか」を考察する。

このように行動と成果を合わせて振り返り、その因果関係を捉えて評価する視点が不可欠となる。売り上げや業務時間など具体的で客観性の高い数字に着目し、行動する前と後を比較することで、評価しやすくなる。

【おまけ】積ん読をなくすには?

興味を持って本を買ったのに、読むタイミングを逃してしまい積んだままにしてしまうこと、ありますよね?

これをなくすポイントは本を買ったその日のうちに、スクリーニングまでやってしまうこと

スクリーニングを行うのにかかる時間は5分程度。書き込みや付箋を貼っておけば古本屋に買い取ってもらうことができず積ん読を防ぐことができる。また、新しい本を買うのは前の本を『確かめる』まで行ってからのご褒美にする

感想

いかがでしたか?

本書は、一般に理系が得意とする「合理的な考え方」を読書に応用したノウハウ本となっています。

趣味として本を読むのであれば各々の読み方で構いませんが、残念ながら私たちの自由に使える時間は限られています。特に、忙しい学生やビジネスマンは、この限られた時間の中で多くを吸収し、成果を出すことを目指している方が多いと思います。

本書で『超合理化サイクル』を学び、読書効率を最大化することで、より効果的に本を読んでいくことが可能になります。また、「読書しているのに、知識が身につかない」「もっと効率的にたくさんの本を読みたい」と考えている方にも、おすすめです。

ぜひ、一読ください。