【書評】Wanhoの読書備忘録

ワンホの本要約ブログ

「本の要約」をわかりやすく書いていきます。

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『なぜ、仕事は予定通りに終わらないのか?』

心理学ジャーナリストの著者 佐々木正悟が2014年に執筆した本書。著者は子供のころからタイムマネジメントを追求し続け、『理想の時間管理術』に出会ったそうです。

私が他のタイムマネジメント系の書籍と比べて面白いと感じたのは、本書は「時間が足りなくなる」のではなく「初めから時間はない」ということを前提とした上で、その足りない時間を活用する方法を紹介しているところ。個人的にはこの意外な事実に驚きました。

本書では、時間管理がなぜうまくいかないのか?を追求した上で、具体的な対応策を紹介しています。監修の大橋悦夫が開発した「タスクシュート」というツールの宣伝のみかと思いきや、このツールに頼らなくても本書で学べることはたくさんあると感じました。

以下、本書で学んだ活用できることをまとめましたので、ぜひ読んでみてください。

それでは、内容を見ていきましょう。

Wanhoの個人的評価

読みやすさ ★★★★★
新規性 ★★★★★
有用性 ★★★★
おすすめ度 ★★★★★

 

なぜ時間が足りなくなるのか

多くの人は「時間が足りない」と口にし、「うまくやれば時間が足りるはず」「ダラダラしなければ時間がないわけではない」と思い込んでいる。しかし、時間はもともと足りないのです。まずは、人が「時間が足りない」と感じる4つの要因について見ていきます。

「余裕がないこと」に気づかない

時間が足りないという事態に陥る原因のほとんどは、「やることが多すぎる」こと。更に深掘りすると、締め切り時間の扱いを間違えていることが原因。

多くの人は「最終の締め切り時刻以外の時刻」を無視しているのです。

例えば11時に飛行機に乗るなら、目標は通常「11時の飛行機に乗ること」となります。しかし実際は、その前に搭乗手続きや朝食、空港まで移動と「連続する行動」が並んでいます。

つまり、私たちはフライトの時刻を知るだけでなく、「搭乗手続き」「朝食」「移動」それぞれの締め切り時刻を押さえておくべきなのです。

改めて考えてみると、何時までに手続きして...何時に朝食とって...、と正確には管理しませんよね。これが問題なのです。

大切なのは準備も予定と定義すること。日ごろから繰り返している歯磨きや食事、会社に着いてすぐのメールチェックなどの行動は、つい優先順位を無視してやってしまいます。繰り返している事は取り組みやすいためです。

また、『現状維持コスト』を無視していることも原因の1つです。ここで指す現状維持コストとは、睡眠時間、食事の時間、トイレに行く時間などの「生理的欲求」や、移動時間や着替える時間、洗濯や掃除の時間を含む「ただ毎日を生きるため」に使うコストのこと。これらは日々生きていくだけでお金がかかるのと同じように、日々生きてくだけで必要な時間、現状維持に必要なリソースでなのです。

問題は、私たちが「現状維持のために時間をどのくらい使っているか」をほとんど意識していないこと。現実には、想像以上に時間を使っており、場合によっては「生きるために必要な時間」を全部足すだけで、睡眠時間を含めると24時間を超えていたりするそうです。

そのような場合すきま時間など元々存在しないため、すきま時間を活用することは不可能となります。

割り込み仕事を優先する

上司が仕事を追加してきたり、後輩が助けを求めてきたり、電話対応しなくてはならないなど、割り込み仕事は「集中するために要した時間」と「再び集中するのに必要な時間」を奪っていきます

ほとんどの人は「仕事への集中が邪魔されたら、再び集中するのは容易でない」ことを知っており、割り込まれることを嫌います。割り込みによって失う時間そのものは、それほどではなくても、それまでやっていた仕事に集中するために要した時間が無駄になった上、その仕事にもう一度集中するのに時間がかかるのです。

また、割り込み仕事と類似していて、仕事を滞らせる主な原因として「仕事からの脱線」があります。仕事のための調べ物をしているつもりが気がつくとネットサーフィンをしてしまったりするのは、典型的な脱線です。これは意識的に休憩をとるのとは違い、休むことにもならず仕事が進むわけでもないため、極めて非生産的な行動と言えます。脱線は自分への割り込みと考えるべきです。

先送りを繰り返す

夏休みの宿題を最終日にやった経験は誰にでもあると思います。このようなことが起きるのは「緊張が高まりすぎて行動を起こせなくなる」ことが原因です。

程良い緊張感はやる気を高め、最高のパフォーマンスを発揮させますが、行き過ぎた緊張感は、体を硬直させ、行動を起こせなくします。プロスポーツ選手ですら、ありえない状況でミスをすることがあります。これは、精神的活動についても同じように起こります。

要するに、「不安になり過ぎること」が原因なのです。締め切りが遠い仕事や山積みされたタスクは、考えただけでも不安になり着手するのが遅れます。夏休みの宿題も「山のような宿題が待っている」といった恐怖感が緊張を招き、勉強部屋に行くのも嫌になるという悪影響をもたらすのです。

この不安の影響は、長期・短期を問わず発生します。難しい仕事で失敗するのではないかと想像すれば、それだけでも手をつける気持ちが萎えてしまいます。

もう一つの原因は「未来の自分に期待し、未来の時間帯に期待しすぎてしまう」こと。人は「今日は無理だけど明日ならできそうな気がする」と考え、未来の自分に期待するのです。もちろんこれは錯覚であり、明日であろうと1週間後であろうと、未来の状況は今の状況と全く同じ状態であると考えなければなりません。

完璧主義になる

完璧主義者は、何でも完璧にしなければひどいことを言われたり、仕事仲間からの信頼を失ってしまうのではないか、という不安に苛まれています。

仕事の完成度と締め切りのバランスを考えるとき、完璧主義者は「どのくらいの完成度にすべきか」がわからず、締め切りよりも「完璧でないものを完成品とする不安」を重く見るため、結果として締め切りを犠牲にしてしまうのです。

それでは、これらの罠にかからないように時間を管理するにはどうしたらよいのでしょうか?

次項では、本書で薦められている「タスクシュート時間術」について見ていきます。

タスクシュート時間術

前述の「時間が足りなくなる4大要因」への対策は、手帳やカレンダーを使って時間管理や計画の見える化をしても不十分とし、本書では、これらの問題への対策として「タスクシュート式」の管理方法を提案しています。

まずは基本ルールです。

タスクシュート式の基本ルール
  • 1日分の仕事を1シートで管理する
  • 「これから行うタスク」と「終えたタスク」を一元管理する
  • 1分以上時間のかかることは全て管理する
  • すべてのタスクの見積もり時間を出す
  • 実測値を記録する
  • 常に「仕事の終わる時間」を見える化する

実際にはExcelで管理していくのですが、一般的な時間管理と異なる点が多くあります。

まず、1分以上時間のかかるタスクとその時間を全て羅列しているため「その日の仕事が何時に終わるのか」を想定できます。場合によっては計画した時点でタスクにかける時間が24時間を超えており、別のことをする「時間がない」と言う事実を見ることになりますが、このようにすることで「生活の余白時間」を自覚できます。

また、1日の時間をシミュレートすることで「いつ、どのタスクを行えばいいか」が明確となり安心が得られます。見積もりの精度は完璧でなくても問題はありません。タスクの「終了時刻が全くわからない」のと「ある程度わかる」のとでは大きな差があります。

それに、すべての行動を1分単位で見積もりするのは、病的と思われるかもしれませんが、「予測と現実のズレがある」と言う現実に気づくきっかけとなります。これに気づくことができないと時間の節約など望めないのです。

タスクシュートのポイント

ポイントは以下の通り。

1分以上時間のかかることは全て管理する

「細かく時間管理しなければならない」と感じるかもしれませんが、タスクシュート式の見積もり時間は単なる予測時間に過ぎず、これは行動計画表ではないため、その通りにしなければならないと言うことではありません。

タスクを終えたら終了時刻を入力し、それによって1日の終了時刻が自動計算されるように設定します。計画時の見積もり時間は単なる予測で、実際に終了時刻を入力した際に見積もりとの差を自覚できればよいのです。そうすることで、次回予測する際に、より正確に見積もりすることができます。

常に「仕事の終わる時間」を見える化する

これにより、計画を立てた時点で無駄があるか、省ける仕事はないか、と考えることができます。また、頼み事をされた時、それが残業時間につながるかどうかを知ることができ、これがわかれば必要のないタスクは断ることができるのです。「とりあえずやる」を防ぐことができるようになります。

「これから行うタスク」と「終えたタスク」を一元管理する

これらを一元管理することで、次おこなうタスクや、すでに終えたタスクを可視化することができます。また、開始時刻も事前に決める必要もありません。前述の通り、あくまでも行動を開始した時間を行動の後に記録するのみです。

ポイントは『タスクは開始したい時に開始し、見積もりは適当に』です。

また、見積もり時間はその日のモチベーションの表れであってもOKです。例えば、今日はやる気が起きないからこの作業は「20分」に設定しておこうなど。

見積もりが適当なら、計画の意味がないのでは?

上記のように疑問に思う方がいると思うのですが(私も思いました)、重要なのは『シミュレーションと記録を同時にやること』です。

シミュレーションをしてから行動し、その行動の記録を残すことで2つのメリットが得られます。

  • 追加タスクをする時間がないことが事前にわかる
  • 自分にとっての「時間の使い方」がわかる
    どのタスクにどのくらいの時間がかかるか、正確に知ることができるため。
もちろん毎日のように繰り返し行うタスクで、見積もり時間と実測の時間に差がある場合は、修正することも必要です。また、他のタスクで吸収するようにしましょう。

 

まとめ

メリットをまとめると以下のようになります。

  • 1日の時間をシミュレートすることで、集中して仕事に取り組む
  • 「とりあえずやる」ことをやめて、時間を有効に配分できる
  • 「今日できること」と「できないこと」を見極められる
  • タスク時間を正しく見積もりできるようになる
  • やるべきタスクをやり抜くための時間調整をするようになる

どれも重要ですよね。

これだけのメリットがあるとすれば、「試して損はない」と思います。

割り込みタスクへの対策

タスクシュート時間術の基本を押さえたところで、ここからは「割り込みタスクに対してどのように対処するべきか」について見ていきます。

記録をつける

脱線を防ぐために最も有効な手段は割り込みの記録をつけること。割り込みタスクを記録することで、「何のタスクをいつ中断したのか」が明確になります。

突然の割り込みタスクによって元々おこなっていた作業が中断されると、前の作業が頭から離れず集中できなくなってしまいます。しかし、割り込みタスクを記録することで、中断する前の作業を「一旦忘れても大丈夫」と考えられるようになります。安心して割り込みタスクに集中できるということです。

割り込みタスクが終わったら元の作業に戻れば良く、その際改めてスタートさせた記録を残すようにします。

具体的な手順は以下の通り。

  1. 割り込まれたらやっていたことを中断し、その記録を残す
  2. 改めてスタートさせた割り込みタスクの記録をつける
  3. 中断した作業に戻るという記録を残す

 

休憩をバッファにしない

割り込みタスクを「休憩」の時間で吸収しようと考えたくなりますが、これはNGで、「休憩」と「バッファ」は明確に分ける必要があります

バッファは計画に余裕を持たせるもの。そして、高い生産性を保つために休憩は必ず必要です。そのため1日は『行動+休憩』でできているという認識を持たなければなりません。

休憩を「何かあったときのバッファ」と考えてしまうと「空きの全くない物置のような空間」と同じになってしまいます。

割り込みを予定する

時間をより効果的に使うために良い方法は、割り込み対応時間をあらかじめ『繰り返しの仕事』として予定すること。

会社にいれば上司や同僚に声をかけられたり部下から質問されたりすることがあると思います。これらは全て「仕事を中断させられる」と言う意味では割り込みです。

これらも時間管理しておかないと、割り込みがある度に計画が崩れていきます。これを防ぐために、あらかじめ予定するのです。そうすることで、突然の依頼にも慌てず対処することができます。

感想

いかがでしたか?

本書では「タスクシュート」という有料ツールを薦めている節はありますが(無料版もあります)、時間術という意味では、このツールがなくても実践できるテクニックがたくさんあったように感じました。

また、簡単なものであればExcelで自作することも可能ですし、本書の巻末にも作成方法が記載されています。

「タスクシュート」では、終了予定時刻がが可視化され、だからこそ時間を節約できるし、節約しようという気持ちになれます。また、短い時間のタスクでも「なぜ残業することになってしまったのかわからない」という状況を確実に減らすことができます。

「自分の時間がない」という悩みをもつ全ての人におすすめできる一冊です。私も明日から活用してみようと思います。

気になる方は読んでみてください!