【書評】Wanhoの読書備忘録

ワンホの本要約ブログ

「本の要約」をわかりやすく書いていきます。

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『「権力」を握る人の法則』

スタンフォード大学ビジネススクール教授である著者ジェフリー・フェファーが2011年に執筆した本書。著者が長年の研究をもとに明らかにした、権力を握るための資質や具体的な方法など、権力闘争で勝ち残るためのあらゆる技術がまとめられています。

『ビジョナリー・カンパニー』シリーズの著者ジム・コリンズも推薦!

ビジネスマン必読の書です。

それでは、内容を見ていきましょう。

Wanhoの個人的評価

読みやすさ ★★★★★
新規性 ★★★★
有用性 ★★★★★
おすすめ度 ★★★★

 

なぜ権力が必要か

 権力や地位を手に入れ維持するのは、簡単なことではない。思慮深く、粘り強く、戦略的でなければならず、気を抜かず必要に応じて戦わなければならない。

では、なぜ権力志向になるべきなのか?

権力を手に入れるメリット

メリットは以下の通り。

  • 長く、健康に人生を楽しめる
    権力のない人は、職場環境を自分ではどうにもできないことに無力感を感じ、ストレスを募らせる。こうしたネガティブな感情は健康を蝕む恐れがある。一方で、事態を自分でどうにかできることは、健康と長寿につながる。
  • 富を得る
    言わずもがな、権力は富につながりやすい。
  • 何かを成し遂げるためには必須
    権力はリーダーシップの一部であり、職場のちょっとした改善であれ、それなりの権力が必要となる。

権力を持てば手にできるものを考えても、権力そのものの価値を考えても、権力はないよりある方が望ましい。

続いて、権力を手にする方法を学ぶにあたって立ちはだかる障害を紹介していきます。

権力を手に入れるまでの障害

世の中は不公平

ほとんどの人は、世の中は公正・公平にできていると考えたがる(公正世界仮説

世界が予測可能・理解可能であり「世の中は、良い人は報われ悪い人は罰されるようにできている」と考えている。

また、成功者を見ると「あの人は幸運に値するだけのことをしてきたに違いない」と、逆方向にも推論する。つまり、富や地位や権力を手にしているだけで、その人物の評価は高まる。

逆に不運な目にあった人に対しては「本人に何か原因があるはずだ」と考える。例えば、あんな格好で夜で歩いたから襲われたのだ、と考える。

人は、成功者があまり褒められない手段で成功したとしても、原因を成功者の人格や努力に求め、成功を正当化しようとする。このように、『公正世界仮説』は人間の認識を歪めており、私たちは「世の中は公正である」と考えるのをやめる必要がある

これにより、状況を合理的に認識し、多くを学び、注意深く行動することができる。

リーダーのお手本を鵜呑みにしない

自分のキャリアをお手本として売り込む人の多くが、トップに上り詰めるまでに経てきた抗争や駆け引きに触れないか、綺麗事でごまかしている。また、良いところばかりが強調され、悪しき行動は伏せられている。

特に、偉大な成功者は自己表現に長けており、聴衆が聞きたがっていることを察知して話す技を身に付け、誠実な印象を与える術を心得ている。場合によっては、歴史を都合よく書き換えることもできる。

権力を獲得し維持するためには、良いイメージを持たせることが効果的であり、そのために自分を名経営者として位置づける必要がある。要するに、偉大な成功者からのアドバイスを鵜呑みにするのはやめた方がよいということ。

出世に対する間違った認識と昇進のコツ

仕事ができても昇進できない?

多くの調査で、仕事の実績はさほど昇進に大きな意味を持たないことが明らかになっている。一方、学歴や人種、性別など様々な要素が昇進と関係づけられることが確認されている。

突出した仕事ぶりは昇進につながらないどころか邪魔になることさえある。例えば、上司が有能な人物を失いたくないと考え、他部署への放出を阻止するなど。また、今の仕事に対しては有能でも、より高い地位の仕事には向かないと考える可能性がある。

それでは何が必要なのでしょうか?

自分の存在を気づかせる

権力を持つ人は自分のことで忙しく、部下の仕事ぶりにあまり注意を払っていないことが多い。したがって、しかるべき評価を得るために、まずは「自分が何者でどんな仕事をしているのか」を気づいてもらう必要がある

最も良いのは『上司と話すこと』である。人は、他の条件が同じであれば慣れ親しんでいるものを好む傾向(単純接触効果)があり、これを利用する。

日本では「出る杭は打たれる」というが、いくら良い仕事をしていても目につかない人は認めてもらえない。

自分に有利な評価基準にする

あらゆる評価基準において突出するのは不可能だが、自分の強みが評価されるよう働きかけることは可能。

評価基準を全面的に自分に有利にすることができなくても、自分の強みを強調し、競争相手より優位な立場に持ち込むことは十分に可能である。

また、上司が気にすることを気にする必要がある。上司が重視することと自身が大切と考えることとは必ずしも一致しないため、上司が「何を重視しているのか」を上司に直接聞くことが重要。

「仕事で重視するのはどんなことか」「自分に何を期待しているか」など質問をする。また、アドバイスを求めたり、力を貸してもらうことでよい関係点作りができる。

昇進のコツ

いくら上昇志向が強かろうと、またどれほど仕事ができようと、階層型組織の場合にはそれだけでは役に立たない。自分を引き上げるのも、行く手を阻むのも、組織階層で上位にいて人事権を持つ人間である。

したがって、大事なのは上の人間が昇進を望むように持っていくこと。そのためには、仕事で成果を上げるだけでなく、その仕事をしたのが自分であることを知らせ、存在を覚えてもらうこと、さらに好感を持ってもらうことも必要である。

権力を手にした人の共通点

限られたリソース(時間やエネルギー)の中では、権力を手に入れるために最も重要なものの開発に集中することが望ましい。

以下では、著者による長年の研究によって導き出された「権力獲得に結びつく重要な資質」を7つ紹介する。

権力を手にするための7つの資質

①決意

言わずもがな、何事も大成するためには努力、勤勉さ、根気が必要。そして努力を続け、必要とあらば犠牲を払うためには強い意志が欠かせない。また大きな組織に入ると、腹の立つことや不満が溜まることもあり、やる気を削がれることも多々ある。

そんな状況でも、「必ずやり遂げる」という確固たる決意があれば、諦めたくなる気持ちや怒りを爆発させたい衝動を抑えることができる。

②エネルギー

エネルギーは、怒りや満足感と同様に「伝染する性質」を持つ。したがって、自分自身の活力は周囲の士気を上昇させる。

また、エネルギーと時間を集中投下すれば、何事も達成の可能性は高まる。

そして、上司はエネルギッシュに働く部下を昇進させることが多い。熱心に仕事に取り組むこと自体が重要であり、そうした熱意は組織への忠誠や献身の表れと見なされる。

③集中

1つの業種、または1つの企業に的を絞ってキャリアを形成すること。1つのものに専念すれば知識が深まり人脈も築ける。また、1つの職務やスキルに的を絞って全力投球するやり方も有効である。

多くの調査では、天才と呼ばれる人でさえ、卓越した業績を残すには膨大な準備期間を必要とすることがわかっている。その膨大な時間を確保するためには、1つのスキルに狙いを定めて熟達を目指す方が効率的である。

職務の中で最も重要なもの、つまり目標達成に欠かせない業務に集中することで、目標を達成すると同時に、自分の能力を周囲に印象づけることができる。

④自己省察

内省や省察なくして学習や成長は不可能である。自己省察は自身の中で何度も経験を繰り返すこととなり、この習慣は「実際に経験を積むこと」に相当する。

また、同時に精神を集中し、文章を書き、熟考する訓練にもなる。

⑤自信

あまり面識のない人と仕事をする場合、相手は自分のことを信頼に足る人物かどうか見極めようとする。その際に相手が注目するのは、外に現れる行動や態度である。

自信のある態度を示し、それに見合う知識を備えていれば、影響力を獲得することができる。自分に自信がなく、しっかり自己主張ができないと、給与だけでなく何事でも不利になりやすい。

⑥共感力

交渉はゼロサムゲームではなく、互いに譲歩し合うことによって、双方に満足のいく結果・Win-Winの関係に到達することが可能である。ただしそのためには、相手の立場を理解する必要がある。

相手の視点で物事を見て、「ギブ&テイク」の要領で交渉に臨む必要がある。

⑦闘争心

人は基本的に争いを避けようとする。

面倒な状況や厄介な相手はできるだけ当たらず障らずで済まそうとし、衝突して嫌な思いをするのは避けたい一心で簡単に譲歩し、相手の無理な要求を受け入れてしまう。

裏を返せば、手強い相手にも堂々と渡り合えるなら大半の人より優位に立つことができる。

素直な物言いや押しの強い姿勢、時には挑戦的な態度をとることも必要。

まとめ

以上、権力獲得に結びつく7つの資質について見てきました。 

権力獲得に結びつく7つの資質
  1. 決意
  2. エネルギー
  3. 集中
  4. 自己省察
  5. 自信
  6. 共感力
  7. 闘争心

自分が持つリソースをかけるべき重要な資質が理解できたら、自らを変える努力をしていくことです。著者曰く、障害となるのは

  • 自分を変えるのは可能だと信じること
  • 自分自身を客観視し、長所短所含めて理解すること

です!

都合のいい情報ばかりに目を向けず、自分の資質を開発することにリソースを集中投下しましょう

続いては、「これらの資質を発揮するにはどこから始めるのかベストなのか?」について見ていきたいと思います。

権力を手に入れる方法

ここでは、具体的な『権力の獲得方法』について見ていきます。

著者は本書の冒頭で「ほとんどの人にとって権力や地位を手に入れることは可能」と述べています。仕事の実績は昇進に大きな意味を持たないとなると、どんな方法があるのでしょうか?

出る杭になれ

組織の中には出世競争や権力闘争など多くの競争が存在する。競争に勝てるかどうかは仕事の能力だけでなく、上司の後押しを得られるかどうかに大きく左右される。

この強力なサポートを得るには、冒頭で述べた通り、自分の存在を上司に気づいてもらわなければならない。要するに、私たちは群れの中で目立つ必要がある

頼み事をする

人は、断られることにより自尊心を傷つけられるのを避けるため、できるだけ他人に頼まずに済まそうとする。また、頼みに応じてくれる可能性を自分の物差しで判断しているためである。

しかし、ほとんどの人は、頼まれた相手がOKする確率を過小評価している。これは頼み事をする人は、相手が「イエス」と言うときのコストばかりを考えがちで、「ノー」と言うコストに注意を払っていないためである。

相手の頼みを断るのは「良き隣人であれ」と言う社会の暗黙の了解に背くことになってしまう。人は他人から度量の広い人間だと思われたい。また、面と向かって断るのは気まずいもの。そのため、頼み事は少々大胆でも案外うまくいく

多くの人は子供の頃から親に「人には親切にしなさい」と言われて育ち、何か頼まれたら引き受けるのが当たり前となっている。さらに、頼み事を引き受けてあげれば相手に貸しを作ることになるので立場が強くなる。

また、助言や協力を求められると、それができると評価され賞賛されたと感じる。他人から助けを求められることは自尊心をくすぐり、自己肯定感を強める。

他人があなたをどう思うかなどあまり気にせず、欲しいものや必要なものはとりあえず頼んでみること。

ルールを疑う

残念ながら、ルールは作った人に有利にできている。そしてルールを作るのは成功者であり、権力を握っている人たち。

マルコム・グラッドウェルの調査によると、ルールに則った戦い、すなわち定石通りの戦いでは、すでに力を持っている側が有利であることが示された。これに対して、常識破りの戦法や奇襲作戦をとれば、勝ち目の少ない側が大勝利を収めることが大いにあり得る。

権力を掌握するためには、常識やルールを疑ってかかる方が良い

愛される <  恐れられる

ある調査によると、他人を評価するときには「いい人かどうか」と「できる人かどうか」と言う2つの尺度が用いられることがわかった。できる人とみなされると、タフな人間だという印象を与えられる。

一方で、いい人はあたたかくて親切と認識されているものの、同時に気が弱く頭が悪いという認識を伴いがちであることが判明した。そのため、地位と権力を維持する上では、愛されるより恐れられるほうが得策である。

人脈をつくる

人脈形成はキャリア形成にとっては極めて重要。また、人脈を形成し、維持する能力は誰でも身に付けることができる。

一般に、ネットワーク力(人脈をつくる力)のある人の人事評価が高いことは多くの研究で裏付けられている。また、ある調査では、幅広い人脈を持つ人は仕事満足度、給与、給与の伸び率がいずれも高い傾向にあることが明らかとなった。

ネットワーク力のある人は多くの人と知り合うだけでなくマメに連絡をとっている。そのため誰かがアドバイスを欲しい時、パートナーを探すとき、空きポストができたときに頼られることが多い。

ネットワーク力は前述した「目立つ」と言う点でも、競争に有利に働く。幅広い人脈を持つことは、多くの相手の記憶に残っているということ。目立つ人は認められ、選ばれ、地位が高くなる。地位が上がれば知り合いは増え、ネットワークがさらに拡大する好循環が起きる。

人脈作りはそれなりの労力をかけなければならない。まずは知り合いになりたい人、やっておくべき人、コネを作っておきたい組織のリストを作成する。このリストに沿って人脈を広げ、できるだけ多様な人と知り合う方法を考える。

陥りやすい落とし穴の1つは、同じタイプの人とばかり接してしまうこと。ネットワークを広げるためには未開の地を開拓しなければいけない。

有効なネットワークを築く

最も望ましいネットワーク戦略は、できるだけ異なる集団に属する多種多様な人と知り合うこと。ただし深く知り合う必要はないし、強い結びつきを育む必要もない。だからといって、そのようなネットワークが偽物の脆い関係だというわけでもない。

社会的な紐帯には、強い密着性は必要ない。そのため、あまり時間がなくても有効なネットワークを作ることが可能。『広く、浅く、多様に』を心がけると良い。

強い紐帯の間柄では距離が近すぎるため、行動範囲が重なりやすく、同じような情報しか持ち合わせていない。

社会的地位というものは比較的安定しているので、上がるのは難しいが、一旦上がってしまえば簡単に下がらないと言う特徴がある。そのため、時間やエネルギーをさほど使わなくても地位を維持することは可能である。

人間関係の中心に位置する

幅広いネットワークを持っていても、それだけで影響力を手にできるわけではない。自分自身がネットワークのどこに位置づけられるかが問題である。

重要なのは中心にいること。中心にいる人は情報を入手しやすい、評価が高まる、昇進しやすいなど、多くのメリットがある。

情報も連絡も、全て自分を経由するようなネットワークを持っていれば、影響力は極めて大きくなる。情報の流れをコントロールできること自体が影響力を形成する上、周辺にいる人は中心にいる人物を尊重する。

自分がネットワークの中心にいるかどうかは、何か起きたときに助けを求めてくる人がどれだけいるか、あるいは助けてもらうようアドバイスする人がどれだけいるかを調べてみればわかる。

権力を印象づける

「どのように行動するか」「どのように話すか」次第で、私たちは強さを演出することもできれば、弱い人間に見られてしまうこともある。話し方や振る舞いや外見によって力を誇示できるかどうかは、面接や交渉に至るまであらゆる場面でものを言う。

このような場面をうまく切り抜けるためには、力強く自信ありげにふるまうコツを身に付ける必要があるという。コツは以下の通り。

  1. たとえ演技で自信があるようにふるまっていると、時が経つうちに演技が身に付いてきて、実際に自信を持つようになる。考えが行動に感化されることは多くの研究で確かめられている。
  2. 感情は周囲に影響を及ぼす。自信や満足感といった感情は伝染する。例えば、道を笑顔で歩いていたらすれ違う人々も笑顔で応える。
  3. 感情も行動も自己増殖的な性質を持つ。相手に笑顔で接し、相手からも笑顔が返ってきたら、自分自身はもっと嬉しい気分になる。人間同士の反応にはこのように再帰的な性質があり、一度作られたムードは安定して続きやすい。

次は具体的なふるまいについて見ていきます。

動作に気をつかう

ある調査によると、背の高い人の方が報酬が高く、高い地位を占めやすいことがわかっている。また、肉体的な魅力が高報酬につながりやすいと言うデータもある。

しかし、外見以上に大事なのは立ちふるまいである。人は緊張している時、体が縮こまり背中を丸めるなど防御の姿勢を取りやすい。そういう時こそ背中をまっすぐにして立ち、胸を反り気味にし、骨盤を広げるようにするだけで威嚇的に見える。

このように動作によっても権力や決意を表すことができる。長く曲線的な動作ではなく、短く直線的な動作を心がけると良い。また、目をまっすぐに見て話せば、力強さだけでなく正直で素直な印象を与えることができる。

説得力のある言葉で話す

以下、社会学者マックス・アトキンソンの「雄弁家の手法」。

  1. 間を取る
    間を取ることによって聴衆に強い印象を与え、賛同を促し、場合によっては拍手を誘導することができる。
  2. 論点を箇条書きにする
    3項目程度が望ましい。例えば「申し上げたいことが3点あります。第一に...」のように話せば、あらかじめ準備し論点を整理してきたこと、問題を多角的に検討してきたことを聞き手に示す効果がある。
  3. 下書きやメモを使わない
    特にスピーチやプレゼンで原稿を見ずに話せば、テーマを熟知しており即興で話しているとの印象を与えることができる。

話上手になる唯一の方法は経験を積むこと。会社のプレゼンテーションやコミュニティの集まりなど、人前で話す機会は積極的に活用する。

第一印象を良くする

第一印象は最初の数秒で決まる。印象は、事前情報や過去の実績に加えて、その時その場所の表情、ふるまい、声、外見によって形成される。また、数秒で決まった第一印象は後々まで維持される。

第一印象が長続きする現象は4つのプロセスで説明できる。

  1. 時間の経過に伴う注意力の低下
    多くの人は、第一印象の決定後は気が緩み、後から受ける印象に前ほど注意を払わない。
  2. 情報の選択的取捨
    第一印象が定まってしまうと、それと一致しない情報を無視しがちになる。これにより、第一印象と一致しない情報は無視して、一致する情報のみを偏重する傾向がある。
  3. 第一印象の実現行動
    人は自分が抱いた第一印象が正しくなるような行動を自ら取る。ある調査では、相手を優秀だと思っている人は、相手の得意分野に関する質問をしたり、能力を発揮する機会を与えたりする傾向があることがわかっている。
  4. 偏向的な同化作用
    人は後から受け取る情報を第一印象と一致するようにねじ曲げて解釈する傾向がある。

要するに、権力を持つことを相手に印象付けるには、外見や自信のあるふるまいが大事。自分に対する相手の印象は最初の数秒で決まり、その印象は長く維持されることから、特に初対面の人と接する際には、良い第一印象を与えられるように行動することが必要ということ。

代償と転落

ここまでは権力を持つことのメリットや具体的な方法について見てきましたが、権力は手に入れるのも維持するのもそれなりのコストを伴います。

ここでは輝かしい成功の裏にある、影の部分に注目していきます。

「権力」の代償

監視される

権力を持つと、一挙手一投足が注目されることとなり、仕事が非常にやりにくくなる。

一般的には共同作業者がいると、それ自体が刺激となって1人の時よりも各人の作業量が増加する(社会的促進効果)。これにより、ある点までは刺激がうまく働いてプラスになるが、それを超えると緊張が大きくなって生産性や判断力が落ちる。特に、複雑な知的作業には、この効果は基本的にマイナスに作用する。

もう1つのマイナス要素は、仕事に集中できなくなること。世間の目が注がれる立場になれば、イメージアップに時間とリソースを取られることになり、どうしても本業に注ぐ時間が減ってしまう。

また、体裁を気にし失敗を恐れるあまり、リスクを取らず安全な道を選びがちになる

時間の自由を失う

社会学者のジェームズ・マーチ曰く「権力か自由のどちらかを手にすることができるが、両方を手にすることはできない」。CEOや社長といった人たちは、過密スケジュールで長時間働きづめになり、次第にエネルギーは失われ、本業での重要課題や予想外の事態に対応できなくなる。

リソースが枯渇する

高い地位を目指すのもそれを維持するのも、多くの時間とエネルギーを必要とする。権力を手に入れるために時間を使ったら、その分他のことができなくなる。

趣味やスポーツなど自分の楽しみ、大切な人と過ごす時間を犠牲にしなければならない。

人間不信になる

地位が上がり権力が強大になるほど、その地位と権力を狙う人は増える。したがって、権力を持つ人は、「誰が信用できるか」という切実な疑問を持ち続けることとなる。

権力者の失脚を願い、実際にそれを画策する人もいる。また、出世のために媚びへつらう人も現れる。

権力を持ったら「間違いなく信用できる人物かつ自分の後任になる可能性のない人」以外は、信用しすぎてはならない。

転落しないために

もし権力を手に入れても、それを維持できる保証は何もない。アメリカでは年々離職率が増加しており1995年から2006年の間ではCEOの更迭または辞任の件数は、全世界で318%増加している。

権力を失う理由は様々だが、共通の要素はいくつかある。その要素について見ていきましょう。

自信過剰になる、油断する

権力者の周りには気に入られようとする人が集まり、彼らは権力者の命令通りに動く。権力者は全てが自分の望み通りになることに慣れ、特別扱いされることを当然と思うようになる。初めのうちは、これらは地位のおかげと自覚しているが、時が経つにつれてその意識が薄れていく。

それによって、権力を手にした人には「欲しいものをなんとしても手に入れようとする強引な行動」が現れ、さらには「自分だけは規則を破っても良い」と考えるようになる。

多くの研究が「大きな権力を持つようになると自信過剰になり、油断し、物の見方が硬直的になり、他人の意見を無視するようになる」と指摘する。そして、周囲の人間は全て自分の欲望を実現する手段だとみなし始める。

自信過剰になることを防ぐ最善の方法は、自分を冷静に見つめること。自分自身をよくわかっていなかったら、いずれ自分で自分をコントロールできなくなる。権力を持つようになってから自分の振る舞いがどう変わったか、しっかりと省みられる人は長く権力を維持できる。

簡単に信頼する

自信過剰になると、他人の言葉を信用し、彼らの忠誠を簡単に信じてしまう。他人の意図を疑わず警戒心を解いてしまうと敵はその隙を狙ってくる。

重要なのは相手を見極め安易に信用しないこと。相手を見分ける1つの手段は、言葉ではなく行動に注目すること。格言にもある通り「行動は言葉よりも雄弁」である。

自制心を失う

組織のトップは激務であり、気の進まない役回りも引き受けなければならない。例えば、冠婚葬祭への列席や社交場の付き合いなど。その結果、部下に対して感情を爆発させたりすることになる。

権力を持つと、自分の言動に慎重でなくなり、他人がどう思うかよりも自分の野心に集中しがちになる。

感想

組織には政治的駆け引きや権力闘争がつきものです。とすると、どのようにふるまうべきかを学び、それらを日常的に実践していけば組織内で成功に近づくことができます。

本書にあるように残念ながら人生は公平ではないし、不満を言っても始まりません。「そのうち状況は好転するだろう」と考えるのではなく、自分をよりよい場所に引き上げるのは自分しかいないと考え行動するべきです。

また、権力を握るための術を知っていると、彼らの影響力から逃れることもできると思います。本書から学んだことをどう活かすかは人それぞれですが、「出世したい人」はもちろんのこと「社内政治に巻き込まれたくない」と思う人にも役立つ一冊です!

長くなりましたが、気になった方はぜひ一読ください。

 

 

『要点を理解して、きちんと自分の知識にする読書の習慣』

著者である宮口公寿氏は独自の記憶術を編み出し、東京大学薬学部に合格後、首席クラスで卒業。この記憶術を宮口式記憶術として1万人以上の指導実績があり、現在もセミナーを通じて普及・指導に努めている方です。

そんな宮口氏が2010年に著した本書の目的は、「読書という行為から本を取る方法」「かけた時間とお金を何倍にもして取り返す方法」を示すこと。

少し大げさに感じますが、読書法のポイントは押さえられており、読書によって知識を得るための方法はしっかり論じられています。個人的には、読書初心者向けに「本の読み方」を紹介しているというイメージです。

全205ページとコンパクトにまとめられており、さらっと読むことができる内容です。重要な点のみ、まとめましたので、以下ご覧ください。

それでは、内容を見ていきましょう。

個人的評価

読みやすさ ★★★★★
新規性 ★★★★★
有用性 ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

 

読書に関する誤った考え

本を読み飛ばす罪悪感

人は購入したのに読んでいない本があると、また本の中で一部でも読まない部分があると、罪の意識を感じる。強迫観念とも言えるこの罪悪感が私たちに不安や不快感をもたらす。

この『強迫観念』を取り除く最も良い方法は、目的意識を明確化すること。何のためにその本を読むか?ということを常に認識する。

要するに、その本を読む目的がはっきりしていれば、目的に沿わない内容を読み飛ばしても罪悪感を感じない、ということ。

「この本から〇〇の知識を得たい」→「△△の部分は必要ないから読み飛ばしてOK」

裏を返せば必要のない部分を読み飛ばすことで時間を節約し、他に有益な時間を過ごすことができる

目的を明確にするには?

衝動に駆られて本を購入するとき、頭の中に関心のあるトピックがあり、そのセンサーに触れたものが大きな印象として焼き付く。この購買衝動を起こさせるトピックが、自身が本を読む目的である可能性が高い。

本を買った(または借りた)ときの感情を思い出し、何に興味を持ったのか?何を知りたいと感じたのか?を自身に問うことで、その本を読む目的をはっきりさせる。

 目的を明確化し準備が整ったら、具体的な読書方法について述べたいと思います。

宮口式読書法

一般的に理解の過程は、空っぽのコップに知識という水を注ぎこむことと思われている。しかし、記憶と理解は表裏一体。はじめに漠然とした世界から知識がフォーカスされてくる過程があり、蜘蛛の糸のような柔らかいものを張っていく。クロスワードパズルを埋めていくように、これが徐々にしっかりとしていく。

要するに、概要を理解してから細かい部分を明らかにしていくということ。最初から綿密にやらないことが重要。

例えば、分厚くて難解な本を理解するには、理解できる部分から読んでいく。理解できる部分がない場合は、本全体にさっと目を通す。これにより「どこがわからないか」を理解する。

準備編

目的を決める

本を読む前に、少し大きめの紙に「この本を読む目的」を書く

読書に夢中になるとどうしても脱線したくなる。そのために目的を確認する。

読んでいる間に目的が変化したら、その目的を紙に追加していく。

これによって最初わかっていなかった真の目的がはっきりしてくることがある。その目的をクレド(信条)にまで高めていくようにする。

付箋を貼る

気になったところに付箋を貼る

重要なポイントに付箋を貼っておけば、後で読み返すことが楽になる。読み終わったら、その先の張ったところだけ流し読みする。すると、関連知識(付箋が貼っていないところまで)も思い出すことができる。

人間は覚えられないのではなく思い出せないだけ。思い出すきっかけがあれば比較的容易に思い出すことができる。

余裕がある場合、しばらく経ってからもう一度流し読みすると、さらによい。

実践編

目次を読む

本を理解するには、冒頭の目次にあるすべての見出しを詳細に読む。

著者は何を言いたいのか、自分が既に知っているところは何か、知らないところは何か、何を得たいか、どこに興味が持てるかなどを明らかにする。

斜め読み(1回目)

目次をじっくり見た後、1回目の読書は全体像を掴むことに専念し、目次で考えたことを明確に意識しながら1冊30分~1時間で読んでいく。ここでは、「早く読むこと」と「ある程度理解すること」を両立させる。

読み終わったら、付箋を貼った部分を何度か読み、頭の中で要点と言うべきストーリーが再構築できるかを確認する。ここでは、他人にアウトプットできる状態にする

じっくり読む(2回目)

2回目の読書で、前段階で気になっていたところを再度読む。

深掘りしたいものが出てきたときにはネットなどで調べる。気になった言葉を検索しながら読んでいくと、物事を多角的にとらえることができる。

問題解決シートを作成する(おまけ?)

時間があって、解決したい問題が複雑な場合、問題解決シートを作成するフェーズを設ける。既に貼ってある付箋ごとに、どんなことが問題かメモをしていく。

その付箋を集めてA4の紙に貼っていき、マインドマップをつくる要領で、付箋同士の位置関係を注意しながら、問題のどの部分がカバーされているか検討していく。

中心には本を読む目的、問題設定を書き込んだ付箋を貼り付ける。新しいアイディアも追加していく。

自分の問題がこの読書で解決しているか?避けているところはないか?新しいアイデアが出たのか?を見える化する。

宮口式の考え方

知識は芋づる式のようになっており、一度読んだ知識は意識していなくても案外かなり覚えているもの。

正確には、何を読んだか忘れてしまうのではなく、何を読んだか思い出せないのである。

何度か読んでいれば、さっと見ただけで何を読んだか思い出すことができる。聞かれても思い出せないけど、言われると思い出すこと、ありますよね。笑

感想

いかがでしたか?

『宮口式読書法』は要するに、

目的を明確にして一度流し読み(30分~1時間)
→ 2回目は気になるところをじっくり読む 
→ A4の紙にマインドマップのようにまとめる

というもの。

革新的とは言えませんが、正しい読書法と思います。

ポイントは、気になる部分へはどんどん付箋を貼っていくこと。繰り返し読む際は、付箋の貼った部分を中心に読んでいけばよいと思います。目的を明確化することで、付箋の貼っていない場所は積極的に読み飛ばせますね。

冒頭でも述べたように、読書に慣れていない方にはおすすめです。読書スピードを上げ、理解力を上げることができると思います。

ぜひ、読んでみてください。

 

要点を理解して、きちんと自分の知識にする読書の習慣 (アスカビジネス)

要点を理解して、きちんと自分の知識にする読書の習慣 (アスカビジネス)

  • 作者:宮口 公寿
  • 発売日: 2010/02/08
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

『ストレッチ -少ないリソースで思わぬ成果を出す方法- 』

ジョージタウン大学準教授の著者カル・ニューポートが2019年に執筆した本書。MITで博士号を取得後に開設したブログ「Study Hacks」では、学業や仕事の生産性を上げ充実した生活を送るためのアドバイスしており、このブログは年間300万アクセスを超えます。

著者自身もデジタル・ミニマリズムを実践しており、本書では『スマホSNSを手放して時間や集中力、幸福感を一気に手に入れる最強メソッド』を学ぶことができます。

それでは、内容を見ていきましょう。

個人的評価

読みやすさ ★★★★★
新規性 ★★★★
有用性 ★★★★
おすすめ度 ★★★★

 

 わずかな努力で成功を収める人がいる一方で、たくさん努力をしても失敗する人がいるのはなぜか?

すでに持っているものを使って、充実した人生を実現することができないのか?

本書はこれらの疑問に答えるべく、10年に及ぶ研究を行ってきた著者が考案した『ストレッチ』という考え方やスキルについて述べたものです。

今では社会通念となっている「成果を上げるには資源(リソース)が必要」という考え方に疑問を呈し、困難な状況下で臨機応変に解決策を見いだす能力について言及しており、恵まれない環境でも成果は出せる!と思えるような、とてもワクワクする内容です。

あの『ビジョナリー・カンパニー』シリーズのジム・コリンズ、『GIVE & TAKE』のアダム・グラントなどの著名作家も絶賛のスコット・ソネンシェインによる衝撃のデビュー作です。

それでは、さっそく内容に移っていきましょう。

 ストレッチとは?

『ストレッチ』とは、多くのリソースを望むのではなく、手持ちのリソースの可能性を受け入れ、それを行動の手がかりにする考え方やスキルを指す。

多くの場合、リソースの使い方やリソースに対する考え方が、仕事上の成功、個人的な満足、組織のパフォーマンスに大きな影響を及ぼす。ところが私たちの多くは、「リソース獲得の重要性を過大評価する一方で、手持ちのリソースを活用する自分自身の能力を過小評価しすぎる」と言う問題を抱えている。これを正すため、リソースを最大限活用して大きな成果を上げ、達成感を得る『ストレッチ』の極意を習得するのが本書の目的である。

本書では、ストレッチの実践家を『ストレッチャー』と呼ぶ一方で、絶えず何かを追い求める人を『チェイサー』と呼ぶ。チェイサーにとって大事なのはリソースの獲得であり、手持ちのリソースの活用には目もくれない。大抵の人は、何をするにもリソースはたくさんある方が良いと考える。

ポイント

チェイサー:「豊富なリソース=優れた成果」
ストレッチャー:「リソースの優れた活用=優れた成果」

 なぜリソースを追い求めてしまうのか?

以下、チェイサーとなってしまう「4つの要因」です。

上方社会比較

人は富や知力、地位などについて他者と比べることで自己を知りたがる。指標となるのは簡単に測定可能な車や家の広さなどで、自分より優れている人と比較する傾向がある。

この比較は、創意工夫によって達成できるはずの多くの成果を見失わせるが、一方で、自分の立ち位置を知る助けになるため止めるのが困難である。

ある調査では、銀メダリストは銅メダリストよりも幸福度が低いことがわかった。銀メダリストは金メダリスト(自分より優れた人)と比較して自分の成績を卑下する傾向が強くなる。対照的に、銅メダリストは自分の成果(メダルの獲得)を強調する傾向があった。

また別の調査では、Facebookの利用時間が長いほど、被験者の幸福度や生活満足度が低かった。これは周りの人々の充実した生活を見ている影響と考えられる。

機能的固着

リソースに対する見方が固定化してしまうこと。チェイサーは思考の柔軟性に欠けており、リソースの用途は特定のものに限られていると思い込んでいる。

通常、人は歳をとるにつれて社会的慣習に絡め取られ、何か道具があっても一般的な用途以外の使い道を思いつかなくなることが知られている。そのため子供の方が柔軟な考えを思いつく場合もある。

リソースの見方が固定化することで、手持ちでは限りがあるためもっとリソースを増やさなければ、と考えがちになる。

無分別な収集

具体的な目的がないのに、集めること自体が目的化してしまうこと。リソースの収集に固執し、必要以上にリソースを集めようとする。

これを防ぐには、目的をしっかり自覚する必要がある。

リソースの浪費

人や資金などのリソースが豊富だと、相応の理由がなくてもそれを使わなければならなくなる。すると、不要な人材を雇い、広大かつ高価なオフィススペースを借りて、むやみやたらにプロジェクトを立ち上げたり、うまくいっていないプロジェクトを続けたりしてしまう。またリソースが多すぎると、人は現状に満足してしまう。

リソースは建設的に利用するよりも獲得する方が簡単である。チェイサーはリソースの獲得自体にこだわりすぎ、それが何の役に立つか見えなくなる傾向にある。

ストレッチャーになるには

以下、ストレッチャーになるための「4つの要素」です。

心理的オーナーシップ

周囲の環境をコントロールできる、個性を表現できる、一国一城の主になれると言う充足感を持つこと。これを備えた人は、たとえリソースを所有していなくても、それが自分のものだと言う当事者意識を持つことができ、手持ちのリソースを幅広く活用できるようになる。

人は当事者意識があるときの方が仕事に対する満足度が高い。実際にオーナーではなくても、オーナーのように行動することにより満足度が上がる。

制約の受け入れ

人はリソースが豊かだと、それを見たままに受け止め、従来のままのやり方で利用するが、リソースが乏しいときは、従来の方法に囚われないで自由に発想するようになる。つまり、問題や課題や機会に直面したときには、制約があった方が既存の資源を最大限活用しやすくなる。機能的固着に対照的な考え方である。

人は本能的に最も楽な道を歩み、ありきたりな考え方に頼ることで、精神的エネルギーを節約しようとする。例えば、画家のクロード・モネは明暗のコントラストを排除し、具像画とはあえて距離を置くことで印象派の確立を可能にした。

また新商品の開発には予算を設定した方が創意工夫が発揮され、好結果につながるという研究もある。

質素倹約

ビジネスを良くしない無駄なことにリソースをかけないこと。極端な倹約家になる必要はなく、重要なのは考え方を変えること。質素な人は目先の楽しみよりも長期的な目標を重視する

質素な人は次々とものを買う代わりに、手持ちのリソースを再利用する。慣習に囚われず、チェイシングにつながる社会的比較の影響を受けにくい傾向がある。

あらゆるものに価値を見い出す

アクションを通じてリソースに価値を付加すること。有形か無形かを問わず、どんなものにも大抵リソースとしての可能性があるが、それが一定の価値を生むにはアクションが必要になる。

リソースは外側からやってくるのではなく、私たち自身が創造し形作るのである。

例えば、ある人は農家から見た目が悪くて出荷できない作物を安く買い取り、その果物や野菜を高級ジャムの素材として利用した。ゴミを宝に変えたのである。

ものの見方を変える

これまで「チェイサーでいることの弊害」、そして「ストレッチャーになることのメリット」を紹介してきましたが、続いては『ストレッチャーになる方法』について見ていきたいと思います。ここからが本題ですね!

「ストレッチ」とは、限られた手持ちのリソースを受け入れ、それを行動の手がかりにし有効活用する考え方やスキル、そしてワークスタイルのこと

どのように考え方や行動を変えていけばよいのでしょうか?

アウトサイダーになれ

 ここでいうアウトサイダーとは、幅広い知識を持つ部外者のこと。経験の幅があるアウトサイダーは、いわゆるその道の専門家より問題解決に秀でている

人は医者や弁護士などの専門家に多大な信頼を寄せるが、彼らが常にベストな回答を与えてくれるとは限らない。そして、例えば医者が誤診をしたとしても、専門家の意見ゆえに人々は間違いに気づかない。

ある調査では、政治や経済成長について専門家の予測を追跡したところ、専門家の的中確率は一般人と同レベルであった。中でも予測精度が高かったのは、小さな事柄をたくさん知っていて、複眼的に結論を導く人(アウトサイダーであった。

複雑な課題に向き合うときには、1つのことを掘り下げる専門家より、幅広い知識を持っている方が有利である。専門家は認知的に凝り固まった状態になり、慣例から離れた方法でリソースを活用できない。

また専門知識が増えるほど、すでに身に付けたやり方に頼るようになる(機能的固着)。ここでのアウトサイダーとは、組織に入ったばかりの新人や他分野のプロフェッショナルなど。

多様な経験を積めばリソースについてより広い視野で考えることができ、問題に取り組むアプローチの幅を広がる。一方で、高い専門性が求められる現在では、人々はどんどん狭い範囲で知識を先鋭化させている。私たちは『深くかつ多様な経験』を目指す必要がある。重要なのは、いつでも部外者の視点を持つこと

アウトサイダーになるには

人は経験への開放性(好奇心)を持つことで、自分の小さな世界を超えた多様な経験を積むことができ、発想が豊かになる。自分の小さな世界から一時的に抜け出そうとするなら、専門外の分野に関する本を読む趣味を楽しむ様々な経歴の持ち主と話すなど、新しい行動を集中的に起こせばよい

また自分がリーダーの場合は、周囲にアウトサイダーを確保することが重要。人は自分に似た人をそばに置きたがるため、意識的に多様な経験を持つ人と個人的、あるいは仕事上の関係を築くことがポイントとなる。

 とにかく行動!

人は仕事上の成功や個人的な成功を計画のおかげと考えがちだが、実は大抵の場合、成果の原因となるのは行動である。

計画は役立つのは間違いなく、現代生活で最も重要であると同時に、最も生活を縛る行為でもある

計画を立てたおかげで成功したなどとよく語られるが、パフォーマンスの最大の決め手となるのは「何をするか?」であり、「何を計画するか?」ではない。

計画立案のデメリットは、計画に凝りすぎると行動ができなくなってしまうこと。そこそこの計画で充分なのに完璧な計画を作ろうとするため、計画立案は行動の妨げになりやすい。一般的に注意深く計画を立てれば、最善の結果が得られると考えられている。

確かに、時間や情報などのリソースがあるときは計画が効果を発揮する。ただし、世の中には変数(ライバルの動向、転職先の人間関係など)も多い。それらを考慮して不確かな仮説を立てるとすると、時間がかかる上に行動が遅れる。行動が遅れると、状況がすでに変わってることもある。ある研究では、計画立案とパフォーマンスの間にはわずかな相関関係しか確認されなかった。

ある研究で次のことがわかっている。

『行動重視』の社員は、仕事そのものに刺激を受け、報酬をあまり気にしない。単純に仕事を楽しみ、最善の道を見極めなければならないというプレッシャーとは無縁。内発的動機付けに後押しされて目標へ向けた努力を重ね、目標達成の度合いも高い。

一方で、『計画重視』の社員は計算を重視し報酬にこだわる。ベストな選択を求めるせいで仕事の楽しみが減り、その結果努力をあまりせず目標を達成しにくい。計画を守ろうとするあまり常にプレッシャーを感じ、そもそもこれが最善の計画なのだろうか、と不安を感じる傾向にある。

計画立案の際には常にスピードを取るか、正確さを取るかと言うトレードオフの問題がついてまわる。迅速な行動が必要な時は、他にやり方がありそうでも目をつぶり、検討する情報を絞り込み、分析を止めて最適な方法をとる。

多くの人は計画を立てる時、行動を遅らせ、不確実な未来について考えを巡らしているが、ハイパフォーマーは行動から学習する。ある程度計画を立てたらまず行動、あとは行動しながら試行錯誤するのである。

未来が極めて不透明な中では計画は役に立たず、動き続けながら学ぶことが何より重要である。

 感想

いかがでしたか?

ストレッチャーであることのメリットから具体的な方法まで見てきました。

チェイシングは際限なきリソースの供給に依存した生き方につながり、すでにある資源を有効活用する可能性を閉ざしてしまいます。短期的には一定の恩恵を得られるかもしれませんが、長期的には幸福感を得られず成功から遠ざかっていきます。

そして何かに挫折するとリソース不足のせいにし、身近にあるもののストレッチの機会を失う悪循環に陥るのです。

『ストレッチャー』になるのは簡単なことではありませんが、本書からは「こんな考え方があったんだ」「リソースを増やすことばかりに囚われていた」との気付きを得られます。

また、手元にあるリソースを活かすも殺すも自分次第と考えることで、世界の見え方も変わっていくと思います。

これまで何かと「リソース不足」を言い訳にしてきた人、本書から大切なことを学べるはずです。

おすすめですので、ぜひ一読ください。

 

ストレッチ 少ないリソースで思わぬ成果を出す方法
 

 

『アイデアの99% -「1%のひらめき」を形にする3つの力- 』

「天才的なひらめき」は、成功までのプロセスのほんの一部に過ぎない。

起業家であり作家でもある筆者スコット・ベルスキが2011年に執筆した本書。筆者は、特定の人たちや組織だけが「なぜ、どのようにアイデアを形にし続けることができるのか」を解明することに情熱を向け、ゴールドマン・サックス、ハーバード・ビジネススクールを経てべハンスを創業し、これまで多くの手法やツールを開発してきました。

調査の結果、わかったのは「成功している人は実行力に秀でている」こと。つまり、アイデアを実現する力=『アイデア実現力』を備えていたのです。

本書では、斬新なアイデアを絵に描いた餅に終わらせず、障害を乗り越えて現実のものにするための、今までになかった実践的方法・コツがまとめられています。今すぐ使えるテクニックが満載です!

個人的評価

読みやすさ ★★★★
新規性 ★★★★★
有用性 ★★★★
おすすめ度 ★★★★

それでは、内容を見ていきましょう。

なぜアイデアを実現できないのか

ほとんどすべての新しいアイデアは生まれてまもなく死んでいく。

一番の原因は、「私たち自身の限界」である。限られた時間の中で、家族や友人、仕事、睡眠などに気をとられているうちに、ほとんどのアイデアは消えてなくなる。

イデアを形にするには常にアウトプットを出し、責任を背負い、プロジェクトを管理し続ける必要がある。そのため、どんなに重要で質が高くても、ほとんどの新しいアイデアは日の目を見る事は決してない。

一方で、どんな業界にもアイデアを生み出し実行することに成功し続けている人たちがいる。彼らは自制心を持ち、長期的に成功し続けるチームを築き、リーダーとして他者をうまく導いていた。アイディアの質は、それを実現するプラットフォームに比べればそれほど重要ではない

続いて、そのプラットフォームについて見ていきましょう。

「1%のひらめき」を形にする3つの力

調査によってわかったのは、成功した組織やクリエイターは、説明のつかない「天才的なひらめき」によって成功したのではないということ。

成功者の共通点は3つ。

  1. 物事をきちんと整理し、次々と片付ける。
  2. 仲間を引き込み、コミュニティの力を利用する。
  3. プロジェクトを率いる戦略がある。

多くの人は天才的なひらめきを探すことばかりに注力するが、実際には、イデア実現力を養う方が成功への近道となる。アイデアを形にする事は、私たちの本質への戦いとも言える。

イデア実現力=(アイデア)+整理力+仲間力+統率力

イデア実現の手法やコツの全てはこのフレームワークをベースとしている。整理する力、仲間を引き込む力、リーダーとして統率する力が1つになって、初めてアイデアが実現される。

本ブログでは、特に重要で即実践可能と感じた『整理力』にフォーカスして見ていきます。

 整理力

『整理力』とは、イデアを形にするために物事に優先順位をつけ、エネルギーと注意力を正しく分配する力。創造性を形あるものにできるかどうかは、整理力により如何に生産性を上げるかで決まる。

アイディアに豊かな創造性があっても、整理力がなければ何も生み出すことができない。裏を返せば、才能豊かで斬新なアーティストほどの創造性がなくても、整理力があれば多くの作品を生み出すことができる。形ある結果を確実に残すことにエネルギーを向けるための第一歩は「人は発想に偏りがちだと自覚すること」

あらゆるアイデアは、プロジェクトに結びつけられる。個人的なものであれ、仕事上のものであれ、すべてのプロジェクトはアイデアを実現するためのものである。そして、仕事の流れがうまく管理されて初めてアイデアは形になる。

では、プロジェクトをどのように管理・運用すべきなのでしょうか。

著者は分野に関わらずどんな人にも使える、プロジェクトの運用方法『アクション・メソッド』を開発しました。次項で見ていきます。

アクション・メソッド

ほとんどのアイディアは生まれては消えていき、それらを追求するかどうかは偶然に任されている。すべてのアイディアに対して、アクションステップ(本当にやるべきこと)を把握し、そこに焦点を当てなければならない。ブレインストーミングや年末にノートをとることにはほとんど意味がなく、生産的な環境作りには行動に重点を置いた姿勢が重要である。

ポイントは、自分が取り組んでいること全てをプロジェクトと認識し、それぞれを次の3つの要素に分解すること。

  1. アクション・ステップ
    具体的な個別の作業。報告書を書く、電気代を支払うなど。
  2. レファレンス
    取り組みの参考にするためのもの。資料やメモ、議事録、マニュアルなど。
  3. バックバーナー
    今は行動に移せないが、将来使う可能性があるもの。まだ予算のつかないクライアント向けのアイディアなど。

メリットは、各プロジェクトについてやるべき作業が一目でわかり、その他の要素が整理されているため、気持ちが落ち着くだけでなく実行を妨げることがない。

ポイント

①身の回りのこと全てをプロジェクトと考える
②各プロジェクトを3つの要素に分解する
③「今している行動がどのプロジェクトに関係するか?」という視点を持つ

ちなみに、バックバーナーやレファレンスばかりの「休眠中」のプロジェクトがあってもOKとのこと。

それでは、アクション・メソッドの3つの要素について詳しく見ていきましょう。

アクション・ステップ

イデアを前進させるために実行すべき具体的なタスク

タスクが曖昧だったり複雑だと、それを飛ばして、よりわかりやすいものに取り組んでしまうため、具体的であればあるほど実行に移す際のハードルが低くなる。

ポイントは以下の通り。

  1. タスクを動詞で表すこと。また、短い文章にすること。
    例えば、~を調査する、~の資料を更新する、~に対応するなど
  2. いつでもどこでも全て書き留めること。
    シャワー中や寝る直前でも、思い出したタスクを書き留める。その際、スマホやレコーダーなど、どんなメディアを使ってもOK。

アクションステップには、自分にしかできないタスク以外に「誰かに任せたアクション」「確認が必要なアクション」「待機中のアクション」の3種類がある。

  • 誰かに任せたアクション
    グループで遂行する場合にタスクを誰かに任せたとしても、最終的な責任者がそれを自分のものと考えなければならない。例えば、誰かにタスクをメールで頼んでも、それが完遂されるとは限らない。そのため、相手がそのタスクを終わらせるまでリストから外すべきではない。そのアクション・ステップを誰かに任せたことを記しておく
  • 確認が必要なアクション
    「〇〇を確認する」と書き留める。確認が必要なアクションは相手から返事がないとそのまま忘れてしまいがち。しつこく相手を催促するのではなく、あくまでも確認するタスクとして実行されたかどうかを確かめる
  • 待機中のアクション
    待機中と書き留めることで、自分の手から離れた作業を追跡できる。例えば、To Do リストに「〇〇からの確認を待つ」と言うタスクを書き留め保存する。期日を設定すると通知により追跡を忘れずに済む。

実際の方法に関しては、自分に1番合うやり方を見つけるべき。魅力のあるものはやる気につながり、整理し続けるための手法を楽しんでいれば、それを継続する可能性も高くなる。愛着のわく道具やツールを使うことで意欲を高めることも重要。

バックバーナー

今すぐ取り掛かることはないが、そのうちやりたい(+定期的に見返したい)アイデア

例えば「もっと予算があったらやってみたいこと」「将来やってみたい新しいプロジェクトの漠然としたアイディア」など、今すぐには実行できないアイデアを思いついた場合は、イデアを書き留め忘れないようにすることが重要。そのために後で見直す習慣を身に付ける必要がある。

書き留めたアイデアは専用のフォルダなど1カ所にまとめて保存する。例えば、会議中に思いついたアイデアをノートの端に書き込み、1日の終わりにそれを書類フォルダにまとめたり、PCに落とし込む。

ポイントは、定期的に見直して入れ替えること。最低でも月に1度「バックバーナー見直し」の予定を入れておく。書き込みを一つ一つ見直し、削除するか残すか、ときにはアクション・ステップに移すかを決める。

レファレンス

レファレンスを保存する最大のメリットは「取り散らかったものを減らすこと」「心の平穏」の2つ。

取り組みの参考にするためのものを保存することで、「記憶すること」から解放され、より創造的で実行可能なタスクに集中することができる。ただし、自分の手で情報を記録し、整理しなければならないため、整理するために使うエネルギーを考慮する必要がある。整理の際は、日付やプロジェクトごとにラベリングし、必要ないものは捨てる

実践のポイント

アクション・メソッドを実践するにあたって、重要なポイントは以下の通り。

  • 「仕事関係のタスク」「個人的なタスクを」一緒に管理すること。
    1つのシステムでやるべきことを全て管理する方が効率が良い。
  • シングルタスク
    一つ一つのタスクを順番に実行すること。人は複数のタスクを同時に実行することはできない。
  • 情報処理の時間を取る
    1日の間にたまったメモやメッセージに目を通し、各要素に分類するための時間が必要。
  • アクション・ステップだけ別に管理する
    情報が絶えず流れ込んでくる状況では、アクション・ステップだけを別に書き留めて管理すべき。1番いいのはアクションステップだけを保存する「神聖な場所」を設けて、プロジェクトごとにそれを管理すること。

 優先順位をつける

 プロジェクトを3つの要素に分解した後、アクション・ステップで何から手をつけるかを決めなければならない。限られたリソースを使ってタスクをやり遂げるためには、適切に優先順位を決めることが重要となる。

優先順位の付け方

ポイントは、そのタスクにどれだけのエネルギーを使うべきかによって振り分けること。プロジェクトにかける時間の長さに従って分類するのではなく、エネルギーの配分順に並べてエネルギー表を作る

一方で、エネルギー表を使用しても予期せぬ出来事や緊急な問題が発生すると、注意はそちらに引っ張られてしまう。人は問題や作業の対象にかかわらず、目の前に現れるとすぐにそのすべてに手をつけたがる傾向(すぐやる病)がある。しかし、目の前のタスクに対応しているだけでは長期目標を追いかけることは不可能。

緊急タスクに対応するコツは以下の通り。

  • 「長期目標リスト」「優先事項リスト」を区別して整理する
    リストを2つ用意することで、それぞれに別々の時間を充てることができる。
  • 重要事項を5つだけに絞り込む
    緊急タスクが発生した時、重要ではあってもこのリストにない作業に取り組んでいるならば、それを中断すべき。
  • 誰かに任せる
  • 邪魔されない時間を作る
    1日のうち一定の時間帯を「邪魔されずにプロジェクトだけに集中できる時間」として設ける。

実行力

イデアの実行とは、そのほとんどが努力である。

いくつものアクションステップを実行して初めてアイデアが形となるが、作業を続けていくうちに自分を見失うことも少なくない。多くのアクション・ステップに圧倒され、疲弊し、ゴールが見えなくなったときがプロジェクト存続の分岐点となる

特に想像力豊かなクリエイターは新たなアイデアが生まれたとき、以前のアイデアを実行する努力がおろそかになる。アイデアを形にならないまま見捨ててしまうと、自らの可能性を狭めてしまう。

イデアを実現へと推し進めるには、プロジェクトが存続の分岐点に来たときに、それに耐え、さらに成長できる能力を養わなければならない。実行への姿勢を見直し、集中力を高め、エネルギーを取り戻す必要がある。

それでは、どのようにして自制心を養い、取り組む姿勢を保つのでしょうか?

確信がなくても動け

起業家やクリエイターにとって、成功を確信できるまで待つことのコストは非常に大きい。行動を待っているうちに関心が薄れ、新しいアイデアに関心もエネルギーも移ってしまうこともある。その上、あれこれと分析して計画に自信を持つと、固まった計画の実行に全力を注ぐことになり、必要に応じて柔軟に計画を変更することができなくなる。

行動してみれば、ただ考えているより早く、しかもはっきりと、方向性が正しいかどうかを判断する助けになる。計画は行動しながら随時、軌道を修正していけばよい。

制約を課す

締め切りや予算、信念などの制約は、私たちのエネルギーを管理しアイデアを実現する助けになる。人は可能性の領域がはっきりと定義され、ある程度制約がある方が、より集中し行動しやすくなる。自由を求めるのは自然なことだが、制約を受け入れ、それをうまく利用することも必要。

もし制約が与えられないのなら、むしろ自分からそれを求めるべき。

変化を受け入れる

イデアやプロジェクトは、開発の過程に得られるフィードバックや気づきとともに進化させていく。そのためには変化を受け入れることが重要であるが、そうした変化が正しい理由で適切なタイミングにもたらされる必要がある

例えば、あるプロジェクトに膨大な時間とエネルギーを注ぎ込んだ後に、ゴール目前で方向性を変えるとなると、当然だが大きな反対を受ける。特にプロジェクトが終わりに近づくと、人は不安を感じ、それを延期する理由を考え始めるもの。

最終段階での変更を避けるためには、このような「あら探し」は最初のうちに徹底的に議論しておく必要がある

進捗を見える化する

人は誰しも、前進することでやる気になる。やる気を上げるために進歩を利用するためには、それを目に見える形にすることが必要。

例えば長い列に並んでいる時、列が進んでいるのに自分のすぐ前の人だけが止まると、いらいらを感じる。人は前進を感じられないと不快感を感じる。

著者が創業したべハンスでは、実行済みタスクリストや、古い原稿や資料を進捗を記す証拠として壁全面に貼り付けている。

集中を持続する

イデア実現のためには行動重視の生活を送り、プレッシャーに耐えて前進し続けなければならない。しかしながら、スケジュールを守り、アイデアへ忠誠を保ち続ける事は簡単ではない。

実行の過程では、「不安から生じること」にはできるだけエネルギーを使わないことが必要。自分の衝動に気づき、それを抑制することで初めて、創造的なプロジェクトに取り組み続けることができる。

習慣化

集中力を長い期間に渡って保ち続けるためには、習慣的な作業スケジュールを組み立てる必要がある。創造性の赴くまま気まぐれに流されて生きるのではなく、イデアを実行する時間を確保し、ルーティンを守り続けることで持続力が生まれる。

環境を見直す

周囲の環境は集中力だけでなく、創造性にも影響する。例えば、狭くて閉ざされた空間では集中力が高まり、天井の高い開放的な空間ではおおまかな思考が促される。仕事空間の中に自分だけの邪魔されない場所を確保する。

「不安が生む作業」を減らす

人は失敗に対する恐れや不安から、進展を頻繁にチェックし現場を全て確認したくなる傾向がある。

例えばウェブサイトや銀行残高をチェックしたり、メールを随時確認するなど。このような毎日のチェックを「不安が生む作業」と呼ぶ。

これらに時間をかけることは、時間を浪費しているに過ぎず何の成果も生まない。心とエネルギーと時間を解放し、アイデアを生み出し実行するためにそれらを使うために、「不安が生む作業」を減らす必要がある。

減らすには、まず日々の生活でとっている行動が「不安が生む作業」であることを認識すること。次に、自分に対する規則や習慣を設けること。例えば1日の終わりに30分だけ気になることに目を通す時間を作るなどして対策する。

感想

いかがでしたか?

 今回は、アイデア実現に必須と述べられている整理力、仲間力、統率力のうち、『整理力』にフォーカスして内容をまとめてみました。

本書の中では前半の内容に過ぎませんが、アクション・メソッドは実践的かつ効果的な手法であり、こちらの説明だけで非常に密度の濃い内容となっています。

ありがちな「天才的なアイデアをひらめく方法」ではなく「アイデア実現のための実践方法」に目を向けているところが、個人的には高評価でした。誰もが目を見張るようなアイデアがなくとも、アイデアを実現する力を養うことで成功できる、と感じさせてくれる内容でした。

私も早速実践してみようと思います!

「アイデアはあるけど実行できない」人のみならず、「突飛なアイデアはないけど成功したい」という人はぜひ読んでみてください。また、シンプルに仕事術やリーダーシップ教育としても十分活用できると思います。

少しでも気になる方は、一度読んでみることをおすすめします。

 

アイデアの99% ―― 「1%のひらめき」を形にする3つの力

アイデアの99% ―― 「1%のひらめき」を形にする3つの力

 

 

『デジタル・ミニマリスト -本当に大切なことに集中する- 』

ジョージタウン大学準教授の著者カル・ニューポートが2019年に執筆した本書。MITで博士号を取得後に開設したブログ「Study Hacks」では、学業や仕事の生産性を上げ充実した生活を送るためのアドバイスしており、このブログは年間300万アクセスを超えます。

著者自身もデジタル・ミニマリズムを実践しており、本書では『スマホSNSを手放して時間や集中力、幸福感を一気に手に入れる最強メソッド』を学ぶことができます。

それでは、内容を見ていきましょう。

個人的評価

読みやすさ ★★★★★
新規性 ★★★★
有用性 ★★★★
おすすめ度 ★★★★

デジタルツール依存

インターネットが普及した現代では、多くのアプリやウェブサイトが朝から晩までユーザーの注意を奪い合い、人の気分に影響を及ぼしている。問題は、自分ではどうにもできない状況になりつつあると言う点。多くの時間をネットに費やしたいと思っている人はいない一方で、残念ながらデジタルツールは行為依存を促すように設計されている。

依存による弊害1

四六時中スクリーンを凝視せずにはいられないせいで、人々はどこに、何に注意を向けるべきかの判断を自分ではない何かにコントロールされている。誰もが何らかのメリットを期待してアプリを利用するが、いざ使い始めてみたところで、登録前にはそのサービスの最大の魅力と思えたものが、皮肉なことに頭のサービスによって損なわれていることに気づく。

例えば、遠く離れて住む友達と連絡を取り合うためにFacebookを始めたのに、いつしか目の前にいる別の友達との会話を続けることができなくなっている。

依存による弊害2

無制限にネットに接続していると心の健康を蝕まれる。友人の煌びやかな投稿内容を監視していると、劣等感に苛まれる。デジタルツールの過度な使用がもたらす疲労感は主体性を弱め、幸福度を低下させ、負の感情を増幅し、より大事な活動から注意をそらさせる力を持っている。

原因

スマホ依存の最大の原因は、新しいツールの大多数は表面上は無害と見えても、実はそうでないと言う点にある。誘惑に屈してしまうのはその人がだらしないからではなく、使わずにいられないようにするために開発には何百億ドルもの資金が投じられている。

実際にGoogleの元社員は「テクノロジーは中立ではなく、ユーザーに一定の方法で長時間使わせることを目的としている」と告発している。

依存へ導く要素は2つ。

  • 間歇(かんけつ)強化
    決まったパターンで報酬を得られるよりも、予期せぬパターンで与えられた方が喜びが大きくなる。SNSの「いいね」や「リツイート」は、不規則なフィードバックの効果を利用するようになっている。
  • 承認欲求
    人は他人からどう思われているかを全く意識せずにいることができない。「いいね」をたくさんもらうと承認をもらったような気分になる。

解決法

これらの対策として「デジタル安息日を設ける」「夜はスマートフォンをベッドに持ち込まない」「通知を切る」といった方法がよく挙げられるが、これらの対策では力不足である。

そこで必要なのは、『自分の根本をなす価値観に基づいた、妥協のないテクノロジー利用に関する哲学』。どのツールを利用すべきか、どのように使うべきかと言う問題に明確な答えを提示できる哲学である。

デジタル・ミニマリズム

自分が重きを置いている事柄にプラスになるか否かを基準に厳選した一握りのツールの最適化を図り、オンラインで費やす時間をそれだけに集中して、他のものは惜しまず手放しするようなテクノロジー利用の哲学。

この哲学を採用するデジタル・ミニマリストは費用対効果を常に意識しており、新しいテクノロジーが登場した時、慎重に取捨選択をしている。それを利用してもわずかな娯楽や利便性しか得られない場合は、初めから手を出さないし、そうでない場合でも「目標を達成するためにそのテクノロジーを利用することが最善か?」と自問し、最適な利用法や別の選択肢も検討する。

一方で、デジタル・マキシマリス(デジタル・ミニマリストの対義語)は新しいテクノロジーが目に止まった時、それにほんのわずかでもメリットがありそうならとりあえず使ってみようと言う姿勢を持つ。

ミニマリストは小さなチャンスを見逃しても気にしない。それよりも、人生を充実させると確実にわかっている大きな事柄をないがしろにすることの方を恐れる。

以下、デジタル・ミニマリストの考え方。

デジタル・ミニマリズムの三原則

①あればあるほどコストがかかる
②最適化が成功のカギ
③自覚的であることが充実感につながる

一つずつ見ていきましょう。

あればあるほどコストがかかる

人は特定のツールや行為を考えるとき、それが個別に生むメリットに注目しがちである。例えば、Twitterを積極的に活用すれば人脈が広がったり、斬新な発想に触れたりする機会があるかもしれない。しかし、その利益とかかったコストを比較するとどうだろう。

たまの出会いや新しい発想を目当てにせっせとツイートすることは、自身の時間と注意をどれほど注ぎ込むことに値するだろうか?

最適化が成功のカギ

あるプロセスに投入するリソースを増やしても生産量は無限に増えるわけではなく、いつか限界に達して、投資の増加分に対する利益は減っていく(収穫逓減)。要するにSNSのメリットを享受するには多くの時間・コストは必要ない。

例えばネットニュースは平日に記事をクリップしておき、休日に1週間分の記事に目を通す。ミニマリストはどのテクノロジーを利用するかだけではなく、どのように利用するかを考える。

自覚的であることが充実感につながる

利用するツール類を意識的に選択する行為そのものが幸福感につながる。そしてその幸福感は大概、排除したツール類から得られていたであろうメリットよりも大きい。自分の生活の中でテクノロジーにどこまでの役割を任せるか、自分自身でコントロールすることが充実感や幸福感につながる。

ここまでは『デジタル依存』と『デジタル・ミニマリストの考え方』を見てきました。以下、『デジタル・ミニマリストになるための具体的な方法』について見ていきたいと思います。

デジタル・ミニマリストの極意

ポイントは3つ。

ポイント

①デジタル片付けをする
②孤独の時間を持つ
③会話と接続のバランスをとる

詳細は下記。

デジタル片付けをする

要するに、デジタル・ツールの取捨選択です。
このライフスタイルの移行は30日間で行います。ステップは3つ。

必要ないテクノロジーの利用を30日間休止

現在利用中のどのテクノロジーを必須ではないカテゴリーに分類すべきかを判断する。一時的でも排除してしまうと仕事や日常生活に支障が生じるテクノロジーだけを残し、他のものは全て排除する。

どうしても必要なものは運用規定を定め、いつ、どのような場合なら利用を許可するか具体的に決めておく。

休止期間に、楽しくてやりがいのある活動や行動の発見を目指す

目的はテクノロジーから一時的に離れることに加え、リセット期間中に必須ではないテクノロジーを利用しなくなって空いた時間を埋める、『もっと価値の高い活動』を積極的に探す。

リセット期間の完了までに、真の充実感を生むような活動を再発見し、より良い生活(より意義深い目標の達成を後押しするためだけにテクノロジーを活用するような生活)を作り上げていく自信をその活動から得ていることが望ましい。

テクノロジーをゼロベースの生活に再投入する

30日間の休止期間後、まっさらな状態からスタートして、次の基準をパスしたテクノロジーだけを生活に受け入れ直す。

  • 大事な事柄を後押しする
  • 大事な事柄を支援する最善の方法である
  • 自分で定めた運用規定に沿った形で生活に貢献可能

「このテクノロジーは、自分が重きを置いている事柄を直接に支援してくれるだろうか」と自問する。何らかのメリットがありそうだとしてもそれでは足りない。

例えばInstagramでいとこの赤ちゃんの写真を見る代わりに、月一回電話で話す方が、絆を育むためには効果的。またFacebookを使うのは週末だけ、など運用規定を守る。

孤独の時間を持つ

孤独から生まれるメリットは「新たな発想」「自己理解」「他者との親密な関係」。

特に3つ目、他者と離れて落ち着いた時間を過ごすことにより、いざ他者と交流する機会が訪れた時、そのありがたみを実感できる。スマートフォンの使用により、私たちは他者の思考のインプットに気を取られ、自分の思考の向き合う時間が減少している。

2015年の調査では、10代の若者はメディアを平均で1日あたり9時間消費している。常に他社との接続を要求する文化にあって孤独の欠乏を避けるために、一人きりで考える時間と他者とつながる時間を日常の中で行き来することが大事。例えばリンカーン大統領は夏の夜をコテージで過ごし、翌朝はまた騒がしいホワイトハウスに戻って過ごした。

他者とのつながりは決して悪いことではないが、日常的にバランスよく孤独な時間を持つようにしなければ、つながりがもたらすメリットを享受できない。

このサイクルを実現するために以下のワークを行う。

会話と接続のバランスをとる

近年のデジタルコミニケーションツールの発展により、社交のネットワークは比較にならないくらい広がり、地理上の制約を受けなくなった。その一方で、文字ベースの短いメッセージや承認クリックによる交流が奨励され、やりとりされる情報量は大幅に減少した。

接続(オンライン上の交流)は会話(オフラインの交流)と同様に幸福度を増加させるが、リアルな世界での交流の方が価値が高い。また、ソーシャルメディアを使ったオンラインでのコミニケーション時間が増えると、その分だけオフラインでのコミュニケーション時間は減る。つまり、両者はトレードオフの関係にあり、リアルの世界での人間関係をソーシャルメディアの利用で置き換えると幸福度は低下する

デジタル・ミニマリズムを成功させるには、自分なりの会話と接続のバランスを見つけるところから始めなくてはならない。意識改革のための解決法として『会話中心コミュニケーション主義』となることがおすすめ。 

会話中心コミニケーション主義

接続(オンライン上の会話:メールやツイートなど)は単なる連絡手段と考える。目的は会話のためのお膳立てと、必要な情報(例えば、待ち合わせの時刻や場所)の効率的な受け渡し。この哲学を採用した場合、活発に連絡を取り合う人数は間違いなく減る。

しかし、会話にこそ価値があると考えるため、関係が縮小した感覚は錯覚に過ぎない。私たちが人として渇望するもの『共同体に属している感覚』を与えてくれるものは会話であり、接続は一見魅力的に思えるが私たちに必要なものをほとんど与えてくれない

会話を取り戻すのに役立つワーク

いいねやコメントをしない

会話と接続は同等であるといった学習してしまうと、低価値なやりとりが自分の意思とは関係なく膨張していき、やがて本当に大切な高価値なやりとりは生活から追い出されてしまう。人間関係に波が立つと考える人は、その不安を原動力にして「本物の会話」をすることに時間を使うべき。事前に周囲に知らせておくことも大事。

テキストメッセージをまとめて処理する

テキストメッセージでは連絡がつきにくいようにすると、大切にしている人たちとの距離がやや遠くなるために、その人たちとの関係はかえって強靭なものになる。

営業時間を設ける

特定の曜日の特定の時間を決め、その時間帯は必ずスケジュールを空けて会話ができるようにする。この営業時間を自分にとって大切な人たちに知らせる。これにより、いきなり電話をかけたら迷惑なのではないかと言う不安(音声通話恐怖症)を排除できる。

感想

いかがでしたか?

総じて言えるのは、デジタルツールは人間が依存するように作られており、目的なく使用していると大切なもの(時間や注意力、そして人間関係)を失ってしまう、ということ。

もちろん、基本的にツールは暮らしを良くするためのものですし、生活から完全に排除するのは困難です。だからこそ、不要なものは削ぎ落とし必要なツールを有効に使うことで、よりよい生活が可能ということです。

本書では、デジタル・ミニマリストになるためのワークも多く掲載されており、いくつか実践してみようと思えるものでした。

比較的新しい本ですし、特にスマホ世代の若い人にはグサッと刺さる内容と思います。「Twitterに張り付いている」「ネットサーフィンしていたら時間が飛ぶように過ぎてしまった」「YoutubeNetflixがやめられない」という人にはうってつけ。デジタル・ミニマリストになれれば、多くのリソースを取り戻すことができます。

ぜひ、ご一読ください。