【書評】Wanhoの読書備忘録

ワンホの本要約ブログ

「本の要約」をわかりやすく書いていきます。

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『アイデアの99% -「1%のひらめき」を形にする3つの力- 』

「天才的なひらめき」は、成功までのプロセスのほんの一部に過ぎない。

起業家であり作家でもある筆者スコット・ベルスキが2011年に執筆した本書。筆者は、特定の人たちや組織だけが「なぜ、どのようにアイデアを形にし続けることができるのか」を解明することに情熱を向け、ゴールドマン・サックス、ハーバード・ビジネススクールを経てべハンスを創業し、これまで多くの手法やツールを開発してきました。

調査の結果、わかったのは「成功している人は実行力に秀でている」こと。つまり、アイデアを実現する力=『アイデア実現力』を備えていたのです。

本書では、斬新なアイデアを絵に描いた餅に終わらせず、障害を乗り越えて現実のものにするための、今までになかった実践的方法・コツがまとめられています。今すぐ使えるテクニックが満載です!

個人的評価

読みやすさ ★★★★
新規性 ★★★★★
有用性 ★★★★
おすすめ度 ★★★★

それでは、内容を見ていきましょう。

なぜアイデアを実現できないのか

ほとんどすべての新しいアイデアは生まれてまもなく死んでいく。

一番の原因は、「私たち自身の限界」である。限られた時間の中で、家族や友人、仕事、睡眠などに気をとられているうちに、ほとんどのアイデアは消えてなくなる。

イデアを形にするには常にアウトプットを出し、責任を背負い、プロジェクトを管理し続ける必要がある。そのため、どんなに重要で質が高くても、ほとんどの新しいアイデアは日の目を見る事は決してない。

一方で、どんな業界にもアイデアを生み出し実行することに成功し続けている人たちがいる。彼らは自制心を持ち、長期的に成功し続けるチームを築き、リーダーとして他者をうまく導いていた。アイディアの質は、それを実現するプラットフォームに比べればそれほど重要ではない

続いて、そのプラットフォームについて見ていきましょう。

「1%のひらめき」を形にする3つの力

調査によってわかったのは、成功した組織やクリエイターは、説明のつかない「天才的なひらめき」によって成功したのではないということ。

成功者の共通点は3つ。

  1. 物事をきちんと整理し、次々と片付ける。
  2. 仲間を引き込み、コミュニティの力を利用する。
  3. プロジェクトを率いる戦略がある。

多くの人は天才的なひらめきを探すことばかりに注力するが、実際には、イデア実現力を養う方が成功への近道となる。アイデアを形にする事は、私たちの本質への戦いとも言える。

イデア実現力=(アイデア)+整理力+仲間力+統率力

イデア実現の手法やコツの全てはこのフレームワークをベースとしている。整理する力、仲間を引き込む力、リーダーとして統率する力が1つになって、初めてアイデアが実現される。

本ブログでは、特に重要で即実践可能と感じた『整理力』にフォーカスして見ていきます。

 整理力

『整理力』とは、イデアを形にするために物事に優先順位をつけ、エネルギーと注意力を正しく分配する力。創造性を形あるものにできるかどうかは、整理力により如何に生産性を上げるかで決まる。

アイディアに豊かな創造性があっても、整理力がなければ何も生み出すことができない。裏を返せば、才能豊かで斬新なアーティストほどの創造性がなくても、整理力があれば多くの作品を生み出すことができる。形ある結果を確実に残すことにエネルギーを向けるための第一歩は「人は発想に偏りがちだと自覚すること」

あらゆるアイデアは、プロジェクトに結びつけられる。個人的なものであれ、仕事上のものであれ、すべてのプロジェクトはアイデアを実現するためのものである。そして、仕事の流れがうまく管理されて初めてアイデアは形になる。

では、プロジェクトをどのように管理・運用すべきなのでしょうか。

著者は分野に関わらずどんな人にも使える、プロジェクトの運用方法『アクション・メソッド』を開発しました。次項で見ていきます。

アクション・メソッド

ほとんどのアイディアは生まれては消えていき、それらを追求するかどうかは偶然に任されている。すべてのアイディアに対して、アクションステップ(本当にやるべきこと)を把握し、そこに焦点を当てなければならない。ブレインストーミングや年末にノートをとることにはほとんど意味がなく、生産的な環境作りには行動に重点を置いた姿勢が重要である。

ポイントは、自分が取り組んでいること全てをプロジェクトと認識し、それぞれを次の3つの要素に分解すること。

  1. アクション・ステップ
    具体的な個別の作業。報告書を書く、電気代を支払うなど。
  2. レファレンス
    取り組みの参考にするためのもの。資料やメモ、議事録、マニュアルなど。
  3. バックバーナー
    今は行動に移せないが、将来使う可能性があるもの。まだ予算のつかないクライアント向けのアイディアなど。

メリットは、各プロジェクトについてやるべき作業が一目でわかり、その他の要素が整理されているため、気持ちが落ち着くだけでなく実行を妨げることがない。

ポイント

①身の回りのこと全てをプロジェクトと考える
②各プロジェクトを3つの要素に分解する
③「今している行動がどのプロジェクトに関係するか?」という視点を持つ

ちなみに、バックバーナーやレファレンスばかりの「休眠中」のプロジェクトがあってもOKとのこと。

それでは、アクション・メソッドの3つの要素について詳しく見ていきましょう。

アクション・ステップ

イデアを前進させるために実行すべき具体的なタスク

タスクが曖昧だったり複雑だと、それを飛ばして、よりわかりやすいものに取り組んでしまうため、具体的であればあるほど実行に移す際のハードルが低くなる。

ポイントは以下の通り。

  1. タスクを動詞で表すこと。また、短い文章にすること。
    例えば、~を調査する、~の資料を更新する、~に対応するなど
  2. いつでもどこでも全て書き留めること。
    シャワー中や寝る直前でも、思い出したタスクを書き留める。その際、スマホやレコーダーなど、どんなメディアを使ってもOK。

アクションステップには、自分にしかできないタスク以外に「誰かに任せたアクション」「確認が必要なアクション」「待機中のアクション」の3種類がある。

  • 誰かに任せたアクション
    グループで遂行する場合にタスクを誰かに任せたとしても、最終的な責任者がそれを自分のものと考えなければならない。例えば、誰かにタスクをメールで頼んでも、それが完遂されるとは限らない。そのため、相手がそのタスクを終わらせるまでリストから外すべきではない。そのアクション・ステップを誰かに任せたことを記しておく
  • 確認が必要なアクション
    「〇〇を確認する」と書き留める。確認が必要なアクションは相手から返事がないとそのまま忘れてしまいがち。しつこく相手を催促するのではなく、あくまでも確認するタスクとして実行されたかどうかを確かめる
  • 待機中のアクション
    待機中と書き留めることで、自分の手から離れた作業を追跡できる。例えば、To Do リストに「〇〇からの確認を待つ」と言うタスクを書き留め保存する。期日を設定すると通知により追跡を忘れずに済む。

実際の方法に関しては、自分に1番合うやり方を見つけるべき。魅力のあるものはやる気につながり、整理し続けるための手法を楽しんでいれば、それを継続する可能性も高くなる。愛着のわく道具やツールを使うことで意欲を高めることも重要。

バックバーナー

今すぐ取り掛かることはないが、そのうちやりたい(+定期的に見返したい)アイデア

例えば「もっと予算があったらやってみたいこと」「将来やってみたい新しいプロジェクトの漠然としたアイディア」など、今すぐには実行できないアイデアを思いついた場合は、イデアを書き留め忘れないようにすることが重要。そのために後で見直す習慣を身に付ける必要がある。

書き留めたアイデアは専用のフォルダなど1カ所にまとめて保存する。例えば、会議中に思いついたアイデアをノートの端に書き込み、1日の終わりにそれを書類フォルダにまとめたり、PCに落とし込む。

ポイントは、定期的に見直して入れ替えること。最低でも月に1度「バックバーナー見直し」の予定を入れておく。書き込みを一つ一つ見直し、削除するか残すか、ときにはアクション・ステップに移すかを決める。

レファレンス

レファレンスを保存する最大のメリットは「取り散らかったものを減らすこと」「心の平穏」の2つ。

取り組みの参考にするためのものを保存することで、「記憶すること」から解放され、より創造的で実行可能なタスクに集中することができる。ただし、自分の手で情報を記録し、整理しなければならないため、整理するために使うエネルギーを考慮する必要がある。整理の際は、日付やプロジェクトごとにラベリングし、必要ないものは捨てる

実践のポイント

アクション・メソッドを実践するにあたって、重要なポイントは以下の通り。

  • 「仕事関係のタスク」「個人的なタスクを」一緒に管理すること。
    1つのシステムでやるべきことを全て管理する方が効率が良い。
  • シングルタスク
    一つ一つのタスクを順番に実行すること。人は複数のタスクを同時に実行することはできない。
  • 情報処理の時間を取る
    1日の間にたまったメモやメッセージに目を通し、各要素に分類するための時間が必要。
  • アクション・ステップだけ別に管理する
    情報が絶えず流れ込んでくる状況では、アクション・ステップだけを別に書き留めて管理すべき。1番いいのはアクションステップだけを保存する「神聖な場所」を設けて、プロジェクトごとにそれを管理すること。

 優先順位をつける

 プロジェクトを3つの要素に分解した後、アクション・ステップで何から手をつけるかを決めなければならない。限られたリソースを使ってタスクをやり遂げるためには、適切に優先順位を決めることが重要となる。

優先順位の付け方

ポイントは、そのタスクにどれだけのエネルギーを使うべきかによって振り分けること。プロジェクトにかける時間の長さに従って分類するのではなく、エネルギーの配分順に並べてエネルギー表を作る

一方で、エネルギー表を使用しても予期せぬ出来事や緊急な問題が発生すると、注意はそちらに引っ張られてしまう。人は問題や作業の対象にかかわらず、目の前に現れるとすぐにそのすべてに手をつけたがる傾向(すぐやる病)がある。しかし、目の前のタスクに対応しているだけでは長期目標を追いかけることは不可能。

緊急タスクに対応するコツは以下の通り。

  • 「長期目標リスト」「優先事項リスト」を区別して整理する
    リストを2つ用意することで、それぞれに別々の時間を充てることができる。
  • 重要事項を5つだけに絞り込む
    緊急タスクが発生した時、重要ではあってもこのリストにない作業に取り組んでいるならば、それを中断すべき。
  • 誰かに任せる
  • 邪魔されない時間を作る
    1日のうち一定の時間帯を「邪魔されずにプロジェクトだけに集中できる時間」として設ける。

実行力

イデアの実行とは、そのほとんどが努力である。

いくつものアクションステップを実行して初めてアイデアが形となるが、作業を続けていくうちに自分を見失うことも少なくない。多くのアクション・ステップに圧倒され、疲弊し、ゴールが見えなくなったときがプロジェクト存続の分岐点となる

特に想像力豊かなクリエイターは新たなアイデアが生まれたとき、以前のアイデアを実行する努力がおろそかになる。アイデアを形にならないまま見捨ててしまうと、自らの可能性を狭めてしまう。

イデアを実現へと推し進めるには、プロジェクトが存続の分岐点に来たときに、それに耐え、さらに成長できる能力を養わなければならない。実行への姿勢を見直し、集中力を高め、エネルギーを取り戻す必要がある。

それでは、どのようにして自制心を養い、取り組む姿勢を保つのでしょうか?

確信がなくても動け

起業家やクリエイターにとって、成功を確信できるまで待つことのコストは非常に大きい。行動を待っているうちに関心が薄れ、新しいアイデアに関心もエネルギーも移ってしまうこともある。その上、あれこれと分析して計画に自信を持つと、固まった計画の実行に全力を注ぐことになり、必要に応じて柔軟に計画を変更することができなくなる。

行動してみれば、ただ考えているより早く、しかもはっきりと、方向性が正しいかどうかを判断する助けになる。計画は行動しながら随時、軌道を修正していけばよい。

制約を課す

締め切りや予算、信念などの制約は、私たちのエネルギーを管理しアイデアを実現する助けになる。人は可能性の領域がはっきりと定義され、ある程度制約がある方が、より集中し行動しやすくなる。自由を求めるのは自然なことだが、制約を受け入れ、それをうまく利用することも必要。

もし制約が与えられないのなら、むしろ自分からそれを求めるべき。

変化を受け入れる

イデアやプロジェクトは、開発の過程に得られるフィードバックや気づきとともに進化させていく。そのためには変化を受け入れることが重要であるが、そうした変化が正しい理由で適切なタイミングにもたらされる必要がある

例えば、あるプロジェクトに膨大な時間とエネルギーを注ぎ込んだ後に、ゴール目前で方向性を変えるとなると、当然だが大きな反対を受ける。特にプロジェクトが終わりに近づくと、人は不安を感じ、それを延期する理由を考え始めるもの。

最終段階での変更を避けるためには、このような「あら探し」は最初のうちに徹底的に議論しておく必要がある

進捗を見える化する

人は誰しも、前進することでやる気になる。やる気を上げるために進歩を利用するためには、それを目に見える形にすることが必要。

例えば長い列に並んでいる時、列が進んでいるのに自分のすぐ前の人だけが止まると、いらいらを感じる。人は前進を感じられないと不快感を感じる。

著者が創業したべハンスでは、実行済みタスクリストや、古い原稿や資料を進捗を記す証拠として壁全面に貼り付けている。

集中を持続する

イデア実現のためには行動重視の生活を送り、プレッシャーに耐えて前進し続けなければならない。しかしながら、スケジュールを守り、アイデアへ忠誠を保ち続ける事は簡単ではない。

実行の過程では、「不安から生じること」にはできるだけエネルギーを使わないことが必要。自分の衝動に気づき、それを抑制することで初めて、創造的なプロジェクトに取り組み続けることができる。

習慣化

集中力を長い期間に渡って保ち続けるためには、習慣的な作業スケジュールを組み立てる必要がある。創造性の赴くまま気まぐれに流されて生きるのではなく、イデアを実行する時間を確保し、ルーティンを守り続けることで持続力が生まれる。

環境を見直す

周囲の環境は集中力だけでなく、創造性にも影響する。例えば、狭くて閉ざされた空間では集中力が高まり、天井の高い開放的な空間ではおおまかな思考が促される。仕事空間の中に自分だけの邪魔されない場所を確保する。

「不安が生む作業」を減らす

人は失敗に対する恐れや不安から、進展を頻繁にチェックし現場を全て確認したくなる傾向がある。

例えばウェブサイトや銀行残高をチェックしたり、メールを随時確認するなど。このような毎日のチェックを「不安が生む作業」と呼ぶ。

これらに時間をかけることは、時間を浪費しているに過ぎず何の成果も生まない。心とエネルギーと時間を解放し、アイデアを生み出し実行するためにそれらを使うために、「不安が生む作業」を減らす必要がある。

減らすには、まず日々の生活でとっている行動が「不安が生む作業」であることを認識すること。次に、自分に対する規則や習慣を設けること。例えば1日の終わりに30分だけ気になることに目を通す時間を作るなどして対策する。

感想

いかがでしたか?

 今回は、アイデア実現に必須と述べられている整理力、仲間力、統率力のうち、『整理力』にフォーカスして内容をまとめてみました。

本書の中では前半の内容に過ぎませんが、アクション・メソッドは実践的かつ効果的な手法であり、こちらの説明だけで非常に密度の濃い内容となっています。

ありがちな「天才的なアイデアをひらめく方法」ではなく「アイデア実現のための実践方法」に目を向けているところが、個人的には高評価でした。誰もが目を見張るようなアイデアがなくとも、アイデアを実現する力を養うことで成功できる、と感じさせてくれる内容でした。

私も早速実践してみようと思います!

「アイデアはあるけど実行できない」人のみならず、「突飛なアイデアはないけど成功したい」という人はぜひ読んでみてください。また、シンプルに仕事術やリーダーシップ教育としても十分活用できると思います。

少しでも気になる方は、一度読んでみることをおすすめします。

 

アイデアの99% ―― 「1%のひらめき」を形にする3つの力

アイデアの99% ―― 「1%のひらめき」を形にする3つの力