【書評】Wanhoの読書備忘録

ワンホの本要約ブログ

「本の要約」をわかりやすく書いていきます。

MENU

『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』

怒り、嫌悪、後悔、退屈、恐怖、不安、悲しみなどの
ネガティブ感情は人生に関する知識を増やし成長を促す働きをする

幸福学研究のディーナー博士が2015年に執筆した本書は、「ネガティブ感情は悪いもの」という社会通念を覆す衝撃の一冊です。

「幸福になりたい」「ポジティブになりたい」と考えていませんか?

これらの考え方にはデメリットがあるのです。一方で、ネガティブな感情には思わぬメリットがあります。自分の感情が何を示しているのか、どのように成功に結びつけられるのかを科学的エビデンスとともに学ぶことができます。

それでは、内容を見ていきましょう。

Wanhoの個人的評価

読みやすさ ★★★★
新規性 ★★★★
有用性 ★★★★★
おすすめ度 ★★★★★

本書のハイライト

幸福の副作用

強い高揚感を経験すると、他の良い出来事が霞んで見えてしまう(対比効果)。

例えば、宝くじで1億円を当てたとする。その後、スクラッチくじで1万円当てても幸福感は下がる。また、幸せな人は今の状態に満足しているために、身の回りにあまり注意を払わず、目の前に起きている事でもよく見ていないことが多い。

幸福になりたい願望が強い人は、孤独感が強く、憂鬱で、目的意識も低い。自分の幸福感とポジティブ思考だけを大事にすると、他者の事は後回しになるため、恋愛関係や家族関係、友人関係の質が損われる。 

ネガティブ感情は時に好ましい結果を生む

ネガティブ感情は「何かがうまくいっていない」「すぐ対応する必要がある」と知らせてくれるシグナルである。怒りやその他のネガティブ感情を押さえ込んでしまうと、それらがなぜ湧いてきたのか、それがどんな行動を促しているのかわからなくなってしまう。

例えば、罪悪感を感じた時は「今感じている罪悪感は、自分がより良い、強い、賢い人間になるために役立つだろうか?それとも逆に自分の足を引っ張っているだろうか?」と自問してみる。

罪悪感によって落ち込んだ人は、そういう気持ちを和らげるために、パートナーや同僚のために尽くすようになる。 

快適中毒

私たちは単に基本的な衣食住の快適さを楽しむ段階を超えて、快適中毒となっている。

例えば、空気清浄機やヒーター付きの車の座席など、快適さの追求はキリがない。

快適な環境に身を置き、ネガティブな状況を避けてばかりいると、人としての成長と成熟が妨げられ、冒険の機会を逃し、人生の意味や目的を掴めなくなる。 

防衛的悲観主義のススメ

防衛的悲観主義とは「最も良い結果を望みながら、最も悪い時代を予想すること」。期待値を低くし、何事もなく済むなど甘いことは考えず、起こるかもしれない悪いことをすべて詳細に想像する。

防衛的悲観主義をとると、明るい面にばかり目を向けてネガティブな考え方や感情を避ける代わりに、物事がうまくいかなかったときの気分をあらかじめ想像できる。

彼らは最悪のシナリオを想像して、厄災を和らげるための計画を実行するため、不安を行動に変えられる。研究によると、防衛的悲観主義は、失敗や失望などへの不安によりよく対処できることがわかっている。 

まとめ

不快な心理状態は成長にとって不可欠なばかりか
成功するためのツールである

著者は、人間の本質の中の暗い側面を機会として捉えることを、基本的で健全な態度として提唱しています。

それは「ありのままの自分の不快な部分」をわずかでも受け入れ、積極的に活用すれば、真の成功を手に入れるチャンスを最大にできるということ。

自分の心の状態を良い・悪い、ポジティブ・ネガティブと決めつけるのをやめて、「その場の状況にとって有益かどうか」と考えるようすることが重要です。 

感想

私たちはつい幸福を求めがちですが、本書を読むと、幸福度を高めようと努力するより、ポジティブもネガティブも含めた全ての心理状態を受け入れ、人生の出来事に効果的に対応することの方が重要であることに気づかされます。

ネガティブな感情にも意味があると考えるだけで前向きに生きられますし、成長の糧にすることができます。これは学問やビジネスだけに収まらず、人生全ての出来事に応用できる考え方と思います。

ぜひ、ご一読ください。 

目次

第1章 幸福を求めるほど不安になるのはなぜ?
第2章 快適な生活がもたらしたもの
第3章 嫌な気分にはメリットがある
第4章 ポジティブな感情こそが落とし穴である
第5章 マインドフルネスに気をつけろ
第6章 不快感をうまく処理するーセオドア効果
第7章 ありのままの自分とつきあう

著者

ロバート・ビスワス=ディーナー(Robert Biswas-Diener)

40点以上の学術論文を発表し、六大陸において何千人もの知的職業人たちに心理学の研修を実施。『ジャーナル・オブ・ポジティブ・サイコロジー』誌 編集委員。著書に『「勇気」の科学 一歩踏み出すための集中講義』(大和書房)。

トッド・カシュダン(Todd B. Kashdan)

ジョージ・メイソン大学教授、同校ウェルビーイング促進センター上級研究員、オーストラリア・カソリック大学ポジティブ心理学・ 教育研究所上級研究員。パーソナリティ、ウェルビーイング、人間関係などの分野を専門としている。